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事例

第一生命保険株式会社による非上場企業等への出資を通じたインパクト投資
概要

第一生命保険株式会社は、2017年度に複数の非上場企業等へのインパクト投資を開始しました。国内の大手生命保険株式会社が初めてインパクト投資市場に参入した例であり、幅広い資産を保有する機関投資家(ユニバーサル・オーナー)として、中長期的な視点での収益確保と、社会課題解決の両立を目指している例だと言えます。

【事例の概要】

概要

*ユニバーサルオーナーとは、巨額の運用資産を持ち、中長期的な視座にたって、幅広い資産や証券に分散投資を行っている投資家を指します。幅広く分散投資を行っていることから、、個別の投資先企業の業績や成長・株価のみでなく、金融市場の安定や健全性の確保、経済社会の持続的な成長を求める傾向があるとされています。

スキーム

第一生命保険株式会社は、日本国内の大手生命保険会社であり、総資産残高は約36兆円に上ります(20203月末時点)。同社は201511月に責任投資原則(PRI)に署名をし、これを機にESG投資の体系的な体制整備を開始しました。

同社では、2017年に「ESGテーマ型投資」を設け、投資の意思決定に社会的インパクト評価を組み込んだインパクト投資をスタートしました。

インパクト投資のプロセスと、投資案件の概要は以下の通りです。

【インパクト投資のプロセス】

スキーム
【投資案件の概要】
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企業名 投資金額 企業概要 期待される社会的インパクト
五常・アンド・カンパニー株式会社 10億円 発展途上国におけるマイクロファイナンス事業 発展途上国における金融アクセス改善
Spiber株式会社 10億円 新世代タンパク質素材(人工クモ糸等)の研究・生産 環境負荷軽減(温室効果ガス排出量削減等)
株式会社キュア・アップ 10億円 禁煙治療等向け「治療アプリ」の研究開発・提供 患者の減少、健康寿命の延伸、医療費の削減
クラウド・クレジット株式会社 1億円 「融資型クラウドファンディング」サービスで途上国の事業者へ融資 発展途上国の事業活動促進、雇用創出
サスメド株式会社 1億円 スマートフォンを通じた不眠症治療アプリの研究・開発 不眠症治療における副作用リスク低減、医療費削減
株式会社メルティンMMI 3億円 世界初の「人の手に最も近い」アバターロボット等の研究・開発 危険環境下での作業における事故リスク低減
株式会社MOLCURE 1億円 世界初の抗体医薬品開発プラットフォームの開発・提供 医薬品開発の短期化、医療費削減
株式会社QDレーザ 3億円 最先端レーザ技術を活用した世界初の低視力患者向けアイウェア等の開発・提供 低視力患者のQOL改善
株式会社チャレナジー 2億円 「台風でも発電できる」風力発電の開発 離島等の地域における安定的な電力供給、環境負荷軽減(温室効果ガス排出削減)
株式会社環境エネルギー投資の組成するベンチャーファンド 10億円 環境・エネルギー分野に特化したベンチャーファンド CO2排出量削減
NeuroTrack Technologies, Inc. 8億円 目の動きで認知機能を測る「認知機能テスト」等の開発 アルツハイマー病の予防、医療費削減
株式会社Integral Geometry Science 2億円 乳がんの早期発見を実現する診断システムの開発 乳がん早期発見による死亡率低減
ユニファ株式会社 3億円 スマート保育園への実現に向けたICT等を活用したソリューションの提供 待機児童問題の解決
ライフイズテック株式会社 2億円 中高生向けにIT・プログラミング教育サービスを開発・提供 IT人材の不足
豊中市 禁煙ソーシャルインパクトボンド 0.12億円 豊中市の禁煙事業を対象とする世界初の禁煙ソーシャル・インパクト・ボンド 健康寿命延伸
モジュラス株式会社 2億円 高度な計算科学技術を用いた新規医薬品開発 万人がアクセスしやすい医療の実現
合計 68億円
注目すべきポイントと示唆
  • 1)大手生命保険会社による市場参入

第一生命は、約36兆円の運用資産を持つ有数の機関投資家です。同社では、中長期視点で幅広い資産を保有するユニバーサルオーナーとして、ESG投資が資産運用の柱として位置づけられています。本取り組みは、同社のこうした方針に基づくものであり、大手生命保険株式会社がインパクト投資に本格的に参入した例としては国内初の事例であると言えます。

2)保険会社としての知見・ビジネスモデルを活かした投資

    第一生命保険株式会社では、インパクト投資が保険・ヘルスケア・フィンテック等の知見を活用する機会として認識されています。本事例は、ビジネスモデル上、短期的なエグジットの価値にこだわる必要性が低く、長期的な視点で投資を行えるという保険会社の強みを活かした取り組みであるとも言えます。

    • 3)実務レベルでの社内合意の形成と全社的な推進体制

    インパクト投資分野への参入にあたり、第一生命保険株式会社では、世界で示されている様々なインパクト投資の定義を調査し、自社としての定義を定めました。

    また、投資にあたっては、投資先企業の情報を有する運用部と運用企画部、場合によっては投資先となる経営者とも議論を行いながら、目指すアウトカムや必要な指標を設定しています。

    加えて、同社では、トップが自らESG投資を積極的に取り組む意思を明らかにしており、インパクト投資の導入に向けても積極的な姿勢がありました。

    このように、インパクト投資に対する定義や成果指標などについて実務レベルでのコンセンサスが形成され、全社的に取り組みが進展している点が、本事例の特徴の一つだと言えます。

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