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調査研究
インパクト投資に対する金融市場関係者と行政の理解を深め、国内外の社会課題解決に向けたインパクト投資への取り組みの意義と課題を議論する「インパクト投資に関する勉強会」の第2回目が、9月3日(木)にオンラインにて開催されました。
第1回目の勉強会にて、インパクト投資の取組みの立ち位置の多様性や金融プロダクツの違いによる差異・特性も浮き彫りになったことから、まずは、どのような取組・立場が存在し、多様性にはどのような背景があるのかをより俯瞰的に理解することを目指し、すべての委員を対象に、インパクト投資におけるこれまでの取り組みや考え方に関するアンケートを事前に実施しました。その分析結果をもとに、リスク・リターン・インパクトの関係について、どのように考えるのがよいのか、日本の取組みも国際的取組みに整合するべきなのかそれとも日本独自の取り組みを追及すべきか、インパクト評価に関する今後の課題は何か、インパクト投資を推進するための金融業界横断的な取組みは何か、といった論点について議論を行いました。
座長の高崎大学経済学部教授水口剛氏、副座長の金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー池田賢志氏の両者からご挨拶をいただいた後、共催事務局を務める社会変革推進財団インパクトオフィサー・小笠原由佳よりアンケート結果の報告がありました。その後、委員からの活発な意見交換がなされました。
①リスク・リターン・インパクトの関係についての立ち位置、②国際潮流との関係、③インパクト評価、④インパクト投資推進のために必要な取り組み・施策、の4つの論点について議論が展開されました。①取り組みの立ち位置については、2 軸論の立場をとる委員が多いものの、重要な負の外部性がある場合の3軸の必要性や、そもそも2軸か3軸かといった二者択一の議論ではないのではないかなどの意見もありました。②国際潮流との関係については、国際的整合性が重要であるとの意見が多数ながらも、日本独特の社会課題を国際的枠組みに取り込むことが必要であるとの意見も複数存在しました。③インパクト評価の重要性を踏まえて、現行の評価を更に改善する必要性については皆意見が一致しましたが、より詳細な議論は第3回の議論のテーマとされました。④必要な施策については、案件増加、プレイヤー増加、事例の共有、情報開示、分野間の連結性の確保、受託者責任の整理等、多様な意見が述べられました。
さらに、インパクト投資の規模の拡大と効果を高めることを目的として設立された国際的な連携組織(非営利団体)「Global Impact Investment Network (GIIN)」からは、本勉強会へビデオ・メッセージが事前に寄せられ、CEO/共同創立者アミット・ボウリ氏からは、インパクト投資の定義に関する解説や「インパクト投資はリターンが低い」といったよくある誤解に対する説明に加え、コロナ禍を含め地球規模課題解決のため、インパクト投資の必要性について、またGIINのディーン・ハンド調査部長からは、6月に発行された全世界のインパクト投資家に関する年次調査2020の概要が説明されました。これを受けて、社会変革推進財団事業本部長の菅野文美からは、委員から出された質問も踏まえつつ、その要点を解説しました。
当日は、金融・市場関係者、事業者、業界関係者等からなる委員35名全員が出席し、関係省庁も含め、オブザーバーも含めると約100名程度の参加がありました。
次回は、11月の開催を予定しています。
*GIIN:インパクト投資の規模と効果を高めることを目的として設立された非営利団体。世界最大規模のインパクト投資家のネットワークを運営しており、49の国にまたがる330以上の組織(アセットオーナー、アセットマネージャー、サービスプロバイダーなど)が加盟し、世界で3万人以上のネットワークを有する。
高崎大学経済学部 水口剛教授:
商社、監査法人などの勤務を経て、高崎経済大学教授。博士(経営学・明治大学)。専門は責任投資(ESG投資)、非財務情報開示など。環境省グリーンボンド・グリーンローン等に関する検討会座長、ESG金融ハイレベルパネル委員、ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース座長、NPO法人社会的責任投資フォーラム共同代表理事などを歴任。
金融庁 池田チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー:
2019年3月、金融庁に「チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー」のポストが新設されたことに伴い同職に就任。同職においては、気候変動関連の財務情報開示に係るTCFD提言の日本における実施を担当すると同時に、金融庁内のSDGs取組戦略プロジェクトチームの事務局を務めるなど、サステナブルファイナンスに関する職務を幅広く所掌。