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講演サマリー
GSG Impact JAPAN National Partner(以下、GSG Impact JAPAN)は2026年3月23日、「グローバルサウス・官民共創 インパクト投資フォーラム」を開催しました。本フォーラムは、独立行政法人国際協力機構(JICA)およびAVPNの後援、インパクト志向金融宣言の協力のもとで実施されたものです。
当日は、外務省やJICAをはじめとする政府関係者、国際機関、金融機関、民間企業、スタートアップ、財団関係者など、多様な分野からリーダー約100名が一堂に会し、グローバルサウスにおける社会課題解決と経済成長の両立に向け、官民連携によるインパクト投資の可能性について活発な議論が交わされました。
本フォーラムを通じて、グローバルサウスにおける投資拡大には、官民連携による市場形成の重要性が改めて示されました。
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人口増加や気候変動、国際保健といった地球規模の課題が集中するグローバルサウスは、今後の世界経済成長と社会変革の中核を担う地域です。新興国・途上国の中小企業が直面する年間5兆ドル規模の資金ギャップを背景に、開発金融機関(DFI)の資金を「触媒」として、民間資金をいかに動員するかが国際的な課題となっています。こうした状況を踏まえ、財務的リターンと社会的リターンの両方を目指すインパクト投資への関心も、世界的に高まりを見せています。
日本においても昨年のJICA法の改正、そして2027年度からのJICA中期目標・計画策定を見据え、日本型の官民連携のあり方が問われる重要な局面にあります。
本フォーラムは「日本発でグローバルサウスに向けたインパクト投資をいかに官民連携で促進していくか」をテーマに掲げ、官民の多様な関係者による対話を通じて、エコシステム形成に向けた示唆を共有するとともに、新たな連携の可能性を探ることを目的に開催されました。
本フォーラムは開会挨拶に続き、「グローバルサウスにおけるインパクト投資促進と官民連携」「アフリカにおける官民連携インパクト投資推進の最新状況」の2つのセッションで構成されました。
総合司会は塩田 真弓氏(テレビ東京「Newsモーニングサテライト」キャスター)が務めました。

(1)開催挨拶
開会にあたり、GSG Impact JAPAN National Partner代表の渋澤健氏が登壇し、グローバルサウスへの投資は日本の将来にとって重要であると強調しました。これは、これまでも進められてきたインパクト投資や官民連携の取り組みを踏まえ、同地域が今後の世界経済や社会課題解決の中心となるとの認識に基づくものです。また、GSG Impactが外務省とのパートナーシップで進めている「アフリカ6カ国インパクト投資エコシステム強化支援プロジェクト」など、具体的な取り組みが実現している点にも言及しました。
続いて、GSG Impact会長のニック・ハード氏は、ビデオメッセージで同プロジェクトに触れ、外務省との戦略的パートナーシップのもと、アフリカでのインパクト投資のエコシステム形成や中小企業の資金アクセス改善に向けた革新的な投資手法の導入を推進していることに言及。このパートナーシップの重要性を強調しました。
外務省 国際協力局長の今福孝男氏は、2025年4月のJICA法改正等を踏まえ、民間資金の動員に向けたODAの役割について言及。開発資金に占める民間資金の比重が高まる中で、ODAがその呼び水として機能する必要性を指摘するとともに、時代のニーズに応じて柔軟に進化していく方向性を示しました。

(2)パネルトーク1「グローバルサウスにおけるインパクト投資促進と官民連携」

登壇者(写真左より)
・浜田 敬子氏(ジャーナリスト)※モデレーター
・安間 匡明氏(インパクト志向金融宣言事務局長、金融庁インパクトコンソーシアムアドバイザリー委員会委員長)
・小木曽 麻里氏(SDG インパクトジャパン Co CEO)
・細野 恭平氏(株式会社ドリームインキュベータ取締役副社長)
・平田 仁氏(独立行政法人国際協力機構(JICA) 上級審議役)
本パネルトークでは、グローバルサウスへの投資拡大に向けた課題と可能性、ならびに官民連携のあり方について議論が行われました。グローバルサウスへの投資拡大においては、投資拡大の障壁は資金不足そのものではなく、投資家側のリスク認識や情報不足にあるとの指摘がありました。特にアフリカについては「高リスク地域」と一括りにされがちであるものの、実際には事業リスクとカントリーリスクが混在しており、適切に分解・評価されていない点が課題です。
また、安間氏はユニバーサルアセットオーナーの視点から、ポートフォリオ全体と社会課題が密接に結びついており、それらの解決なくして持続的なリターンは得られないと指摘。重大な社会課題に着目することが結果的に金融機関のリターン向上にもつながるとして、インパクト投資を経営戦略として位置づける重要性を強調しました。加えて、細野氏は、JICAがインドネシアにおいて水素・アンモニア(次世代エネルギー)分野のロードマップ策定を主導した事例に触れつつ、JICAに対し、新たな産業や市場を形成し、日本企業が参入できるエコシステムの構築を担うことへの期待を示しました。
こうした議論を踏まえ、公的資金は単なる資金供給にとどまらず、保証やファーストロスといった仕組みを通じて信用を補完し、民間投資を呼び込む役割を担うこと、投資拡大のためには個別案件の支援に加え、制度整備やリスク評価、インパクト測定を含む「投資が成立する仕組み」の構築が不可欠であることへの認識が共有されました。
(3)パネルトーク2「アフリカにおける官民連携インパクト投資推進の最新状況」

登壇者(写真左より)
・有馬 嘉男氏(NHK「新プロジェクトX~挑戦者たち~」メインキャスター)※モデレーター
・渋澤 健氏(GSG Impact JAPAN National Partner代表)
・林 禎二氏(国際保健担当大使)
・馬場 ちひろ氏(三井住友信託銀行サステナブルビジネス部インパクトビジネス開発室室長)
・金子 洋介氏(SORA Technology株式会社 代表取締役 CEO)
続くパネルトーク2では、アフリカにおけるインパクト投資の現状と可能性、ならびに官民連携の役割について議論が行われました。林氏は、アフリカをはじめとするグローバルサウスでは、「援助」から「投資・ビジネス」へのニーズの転換が進んでいると指摘しました。日本企業の技術やサービスへの期待は高く、特に規制の制約が相対的に少ない環境においては、新たな技術やビジネスの実装が進みやすい状況にあります。こうした動きは、日本企業にとっても新たな成長の機会となる可能性があります。
一方で、馬場氏は、「アフリカ投資は国内のベンチャー投資以上に難易度が高い」と指摘し、情報不足や経験不足といった課題に言及。その上で、ファンド投資などを通じて段階的に関与し、経験を積みながら理解を深めていく重要性を示しました。
また、投資拡大の鍵は個別案件ではなく、市場全体の形成にあることも強調されました。金子氏は、公的機関による支援やインパクト測定の枠組みが民間投資の呼び込みにつながっていると述べ、公的資金が事業の信頼性を高める役割を果たしている点を指摘しました。同時に現地投資家の育成や起業家の成長、資金循環の仕組みなどを含めたエコシステムの構築が不可欠であり、短期的な資金流入ではなく、持続的に資金が回る構造を作ることが必要です。現地に継続的に関与し続けることも、信頼関係の構築や投資機会の創出につながるとの認識も共有されました。
(4)閉会挨拶
閉会にあたり、GSG Impact アンバサダー兼GSG Impact JAPAN National Partner副代表、認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 代表理事の鵜尾雅隆氏は、組織や業態を超えた連携は簡単ではないものの、その出発点はお互いの信頼関係であると述べました。その関係性の上に、新たな価値や変化が生まれる可能性があることに言及し、本フォーラムで共有された論点を踏まえ、今後の連携の重要性を改めて強調しました。


本フォーラムを通じて、グローバルサウスにおけるインパクト投資の推進のためには、制度・人材・ネットワークを含めたエコシステム構築や市場形成が不可欠です。特に、公的資金によるリスク分担や信用創造を通じて民間資金を呼び込む仕組みが重要であるとともに、投資拡大の障壁はリスクそのものではなく、情報や経験の不足にあることから、現地理解の深化とナレッジ共有の強化が求められます。
グローバルサウスへの展開は、日本の成長戦略の一環として位置づけるべきテーマであり、具体的な案件形成とエコシステム構築を両輪で進めていくことが、今後の鍵となります。
