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インパクト投資の手法を活用した身近な地域の社会課題解決をわかりやすく解説【入門編】:第五回インパクト投資オンラインセミナー開催レポート
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7月20日(火)に開催された第五回インパクト投資オンラインセミナー「【入門編】「インパクト投資とは?地域による地域のための地域の新しいお金の流れ ー 教えて、深尾先生!」では、スピーカーに龍谷大学 教授/学長補佐の深尾昌峰氏、モデレーターには社会変革推進財団(SIIF) インパクト・オフィサーの戸田満氏をお迎えし、インパクト投資の手法を活用した地域の社会課題解決の展望についてご紹介しました。

今回のセミナーは、日経新聞で「社会課題解決の新手法」コラムを連載され、現在は龍谷大学教授として大学生の皆さんを前に教壇に立たれている深尾氏に、入門編としてお話をうかがいました。90名以上の参加申し込みがあり、うち60%はアンケートベースで「基礎情報は把握している~全くわからない」で、大学生の皆さまからもご参加いただくなど、身近な地域課題解決に関心を寄せるすそ野の広い参加者にお集まりいただきました。

インパクト投資とは~市場調査報告書から読み解く~

セミナー前半では、戸田氏から、インパクト投資の概略と市場調査報告についてご紹介いただきました。

 「日本におけるインパクト投資の現状と課題―2020年度調査―」では、国内のインパクト投資市場は5,126億円であり、海外が先行していること、インパクトの測定・マネジメントの手法が体系化されていないことが最大の課題となっていること、などが挙げられました。

レポート
解説動画
インパクト測定・マネジメント実践ガイドブック

経済合理性とインパクトに、地域を掛け合わせ

戸田氏によれば、英国のシンクタンクである New Economics Foundationが提唱する「漏れバケツ理論」を引用し、地域の中にお金が流れると、それが回りまわって地域内でお金が使われる循環率が上がるが、地域外に出ていき地域に残らないと地域経済が回らなくなる、とのことです。そこで、個人と経済との関係にインパクトの判断軸が加わることで、「インパクト・エコノミー」が実現するといいます。これらを紐解くうえで、50年前にブームになった「スモール・イズ・ビューティフル」という本を引用し、地域の小さなお金の流れ、多国籍企業のような国境を超えるお金の流れ、その両者がうまく組み合わることが持続可能な社会の実現に大切なのではないかという話がありました。

「インパクト投資」×「地域課題」×「住民参加型」の可能性

地域における寄付を仲介する仕組みであるコミュニティ財団を推進してきた深尾氏は、税収だけに頼るのではない、ポスト近代の新たな自治モデルを模索するうえで、インパクト投資をはじめとする地域による地域のためのお金の流れが多様化することが大事ではないかと言います。税は、公共的な目的や社会保障に優先的に充当されるため、機動性に欠ける側面があります。寄付、クラウドファンディング、ふるさと納税、インパクト投資、休眠預金など、公共を支える事業の資金ミックス、多様化によって、お金が地域における出会いを作る機能を持つと言います。 

「自分たちの街を自分たちがどう守るか、各地域の暮らしを持続的にするためにどういう社会にしたいか、どうやってアウトカムを作るか」。地域で頑張るNPONGOに助成金を通じて応援することで、地域課題を解決する仕組みはこれまでもありました。しかし、そうしたNPONGOが十分にいない地域では、地域住民が自ら地域の課題を把握し、参加し、一緒に解決策を考える。そして、どうやったら実現できるかを考える、ということを、当事者として身近に感じ、オーナーシップをもって関わることが大事になります。そうした地域の協働・協業の際に、資金調達の問題解決は欠かせません。インパクト投資はその糊代になるとのことです。

モデレーターの戸田氏はこれを、「インパクト投資は、投資家目線で語られることが多い。当事者不在でロジックモデルが作られてしまう事例もある。様々なステークホルダーに参加してもらう仕組みづくり、参加のデザインが重要だと感じた。」と振り返りました。

クロージング

QAでは「地域における資金循環の限界は?」という質問に対して、深尾氏からは「上場企業を中心とした大きな資金のフレームワークを地域に持ち込むのは難しい。小口化・ダウンサイジングする発想、証券化をどうやって実現するか。まだまだできることはたくさんある」という回答がありました。「金融機関以外の一般企業が地域に投資する機会はあるのでしょうか?」という質問に対しては、「地域の企業にとっても、地域がよくなることが回りまわって自分たちのビジネス、従業員の福利厚生に良い影響を与えることになるという想像性を働かせることで投資してくれた事例がある」という回答がありました。「ソーシャル認証制度における工夫やチャレンジは?」という質問に対しては、「“老舗”をどういう風に評価するのかという議論が沸き起こっている。何百年も続く企業の社会性をどう評価したらいいのか、背後にある文化性、地域におけるかけがえのなさも考えないといけない」という回答ありました。

モデレーターの戸田氏からは「参加のデザイン、当事者意識、協働の促進に、インパクトの価値があると感じた。そして、ありたい姿を考えるときに、その地域毎のいろいろな立場・視点を持った方々を巻き込まないと、目的としてのインパクトを考えられないと感じた」と締め括られました。


インパクト投資セミナーは、インパクト投資に関心のある方々や、インパクト投資を実践している方々が、オンラインプラットフォームを通じて国内外の最新の動向・手法・知見に触れる場を提供するための取り組みとして、GSG国内諮問委員会が2020年7月より実施しています。

最新の開催情報は公式Facebookページでもお知らせしますので、ぜひフォローください。
https://www.facebook.com/GSGNABJapan

開催概要
日時 2021年7月20日(火) 17時~18時 ZOOMにて開催
プログラム 17:00-17:15  インパクト投資の概説と「現状レポート」の概略紹介
17:15-17:30 「インパクト投資×地域課題×住民参加型」 の可能性
17:30-18:00 パネルディスカッション
スピーカー 龍谷大学 教授/学長補佐、GSG国内諮問委員会委員 深尾 昌峰
モデレーター 一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)インパクト・オフィサー 戸田 満
参加費 無料
主催 GSG国内諮問委員会
協賛 一般財団法人社会変革推進財団(Supported by 日本財団)

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