SOCIAL

最新情報

報告書

インパクト企業の資本市場における情報開示及び対話のためのガイダンス 第1版
調査報告・提言書
GSG国内諮問委員会は、インパクト企業が未上場の段階から、上場を経て、上場後もインパクトを創出しながら持続的な企業価値向上を実現できるよう、インパクト企業と投資家をはじめとする資本市場の関係者との間において、情報開示等を通じて共通理解を醸成し、建設的な対話を促すことを目的として、事業会社、上場・未上場投資家、証券会社、有識者等の総勢26名により編成されたインパクトIPOワーキンググループを2023年7月に発足。5回の会合を経て、2024年1月にガイダンス草案を公開し、同年1月から2月まで一般からの意見を募集しました。この度、これらの意見を踏まえて議論を重ね、本日「インパクト企業の資本市場における情報開示及び対話のためのガイダンス第1版」を正式公開しました。

 
▶公開資料
① ガイダンス
ガイダンス説明資料
2024122229日)

1.概要

現在、事業成長を伴いながら、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトの創出を意図する企業(以下、「インパクト企業」)が上場する際、及び上場後において、インパクトの追求と持続的な事業成長の関連性を投資家にどのように伝えれば、建設的な対話が生まれるのかといった手法について、十分に確立されていない状況にあります。また、インパクト企業によるインパクト創出の観点を組み込んだ経営マネジメントのあり方も未確立であります。

このような現状の課題を踏まえ、事業会社、投資家、証券会社をはじめとする資本市場関係者等により委員会を編成し、全5回の会合を経て、インパクト企業が未上場の段階から、上場を経て、上場後もインパクトを創出しながら持続的な企業価値向上を実現できるよう、インパクト企業と投資家をはじめとする資本市場の関係者との間において、情報開示等を通じて共通理解を醸成し、建設的な対話を促すことを目的として本ガイダンスを策定しました。

本ガイダンスは、インパクト企業が、インパクトの創出と収益の創出を実現させるビジネスモデルや成長戦略を土台として、資本市場を活用しながら企業価値の向上を実現し、持続的な成長を実現する循環モデルである「ポジティブ・フィードバック・ループ」を加速させるための4つのステップを取りまとめています。

4つのステップでは、インパクト企業が戦略策定から情報開示までどのようなステップを踏むことが望ましいかを提示し、IMM*の概念を企業の経営マネジメントにおいてどのように捉えて実践することが最も望ましいのかを示しています。インパクト企業や資本市場関係者が取り組みを進める際に参照しうるものとして作成いたしました。

インパクト企業や資本市場関係者による本ガイダンスの参照を促進し、十分な取り組み事例や活用フィードバックが積み上がった段階で、さらに本ガイダンスを改善することを目指します。

(※)IMM (Impact Measurement & Management)、インパクト測定・マネジメントとは、事業が社会的課題の解決に及ぼす正負のインパクトを定量・定性的 に測定し、測定結果に基づいて事業改善や意思決定を行うことを通じて、正のインパクトの向上、負のインパクトの低減を目指す日々のプロセス

2.各機関からのコメント
経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室長
富原 早夏 氏

課題先進国であるといわれる日本において、社会・環境課題を前向きなエネルギーとして捉え、事業を通じて新たな社会的機会や市場を創造していく仕組みを、世界に先駆けて生み出していくことが重要です。

このため、経済産業省では昨年、インパクトスタートアップの認知向上と気運醸成を目指すとともに、官民連携での集中支援を行う、スタートアップ育成支援プログラム「J-Startup Impact」を新設しました。

インパクト企業が、インパクトと収益を両立させるビジネスモデルや戦略を土台として、投資家への情報開示や対話を行うことによって、経営資本の充実や先行投資が可能となる。資本市場からの評価を高めながらさらに企業価値の向上を実現する。とても重要ですが、容易いことではありません。関係者間の共通理解を醸成し建設的な対話を行うためにこのガイダンスが示されたことの意義は非常に大きいと感じています。

今後インパクトスタートアップをはじめとする多くの方がこのガイダンスを活用し、こうした「ポジティブ・フィードバック・ループ」を加速する事例が多数生まれていくことで、インパクト企業の成長と、それを支える資本市場の発展につながっていくことを期待しています。


金融庁 総合政策局 総合政策課長
高田 英樹氏

社会・環境課題への改善効果(インパクト)の推進については、従来、時間・資金両面でコストがかかり、事業の成長性や収益性と必ずしも一致しない、トレードオフの関係にあると理解されることも多かったと思います。他方近年では、両者が相互に補完・強化するとの観点に立って、課題対応を通じた事業の促進・成長等に取り組む多様な企業・投資家も見られつつあります。

本ガイダンスは、GSG 国内諮問委員会において、様々なご知見・ご経験を持たれる企業・投資家等が議論し、インパクト企業の評価・開示や投資家との対話のあり方等について取りまとめられたものです。非上場企業等がインパクトの実現を含む自社の戦略について、上場市場も含めてシームレスに資本市場から的確な評価を得ていくことの重要性は、金融庁「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する検討会」等でも度々指摘のあった点であり、議論に重要な一石を投じるものと考えています。

金融庁としても、官民連携のインパクトコンソーシアム等を通じて、企業評価等を含む様々な論点についての議論を喚起・支援していきたいと考えています。
3.ガイダンス目次
1. 背景
2. 目的
3. 本ガイダンスの対象と位置づけ
4. 本ガイダンスにおける基本的な考え方
5. 「ポジティブ・フィードバック・ループ」を加速させるための4ステップ

APPENDIXES
 1. IIRC の6 つの資本
 2. 参考
 3. 開示されることが望ましい項目と開示媒体の関係性
4.インパクトIPOワーキンググループ委員等

本ガイダンスは、事業会社、上場・未上場投資家、証券会社、有識者等の総勢26名の委員が組織の垣根を越えて、複数回にわたり精力的に議論し作成されました。

(本ワーキンググループ終了後、2024 年1 月22 日時点)


[ 座長
]
白石 智哉 GSG 国内諮問委員会委員 / フロネシス・パートナーズ株式会社 代表取締役
[ 副座長 ]
黄 春梅 GSG 国内諮問委員会委員 / 新生企業投資株式会社 インパクト投資チーム マネージングディレクター

[ 委員 ] ※氏名五十音順
安間 匡明  一橋大学客員教授 / 福井県立大学客員教授
井浦 広樹  りそなアセットマネジメント株式会社 株式運用部 チーフ・ファンド・マネージャー
池川 忍   大和証券株式会社 公開引受第一部長
石川 孔明  ライフイズテック株式会社 取締役CFO/Impact Officer
石田 輝彦  野村證券株式会社 サステナブル・ファイナンス部 兼 IB ビジネス開発部 マネージング・ディレクター
今田 克司  一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI) 代表理事
岩谷 渉平  アセットマネジメントOne株式会社 運用本部株式運用グループ チーム長
大塚 泰造  株式会社雨風太陽 取締役 人流創出部門長
菊池 勝也  東京海上アセットマネジメント株式会社 ESG スペシャリスト
倉本 敬治  株式会社SBI証券 執行役員常務 公開引受部長
酒井 久和  SMBC 日興証券株式会社 プライベート・コーポレート・ファイナンス 本部 副本部長 マネージング・ディレクター
酒井 里奈  株式会社ファーメンステーション 代表取締役
末吉 光太郎 GSG 国内諮問委員会委員 / みずほフィナンシャルグループ サステナブルビジネス部 副部長
高橋 照典  三菱UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 投資銀行本部 スタートアップ・アクセラレーション室長
田中 はる奈 五常・アンド・カンパニー株式会社 経営企画部長
竹林 正人  慶應義塾大学大学院 経営管理研究科講師(非常勤)
中村 将人  GLIN Impact Capital 代表パートナー
浜田 洋平  自然電力株式会社 ファイナンス&サステナビリティ スペシャリスト
久納 裕治  株式会社CureApp コーポレート統括取締役/CFO
藤原 選   EY 新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター IPO グループ統括 パートナー 公認会計士
前川 裕貴  アクセリード株式会社 取締役執行役員CFO
山岸 広太郎 株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ 代表取締役社長
山中 礼二  一般財団法人KIBOW KIBOW社会投資ファンド 代表パートナー(グロービス経営大学院 教員)
和田 正嗣  みずほ証券株式会社 サステナビリティ推進部 サステナビリティ・ストラテジスト

[ オブザーバー ]
富原 早夏 経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室長
西田 勇樹 金融庁 総合政策局 総合政策課 サステナブルファイナンス推進室長
水野 紗也 環境省 環境経済課 環境金融推進室 室長補佐
荒井 啓祐 株式会社東京証券取引所 上場推進部長

[ 事務局 兼 ガイダンス執筆メンバー ]
菅野 文美  一般財団法人社会変革推進財団インパクト・エコノミー・ラボ所長
小崎 亜依子 一般財団法人社会変革推進財団インパクト・エコノミー・ラボ インパクト・カタリスト
       (2023 年12 月末時点まで業務委託として支援) / 株式会社stream-i 代表取締役
田原 純香  一般財団法人社会変革推進財団インパクト・エコノミー・ラボ インパクト・カタリスト
       (業務委託として支援) / 株式会社Bipedal 代表取締役

[ 事務局 ]
戸田 満   一般財団法人社会変革推進財団インパクト・エコノミー・ラボ 副所長
佐々木 喬史 一般財団法人社会変革推進財団インパクト・エコノミー・ラボ インパクト・カタリスト
織田 聡   一般財団法人社会変革推進財団インパクト・エコノミー・ラボ ナレッジ・デベロップメント・オフィサー

[ 事務局アドバイザー ]
須藤 奈応 Director, Impact Frontiers
林 寿和  Head of ESG, Nippon Life Global Investors Europe Plc.

5.お問い合わせ先
本ガイダンスをもとに、社内での研修・講演会への講師派遣にご関心がある場合は、以下連絡先までお問い合わせください。

問合せ先
GSG国内諮問委員会 インパクトIPOワーキンググループ事務局
一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)インパクト・エコノミー・ラボ
担当 戸田・佐々木
lab@siif.or.jp

関連記事VIEW MORE

  • ホーム
  • 最新情報
  • インパクト企業の資本市場における情報開示及び対話のためのガイダンス 第1版