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世界においてインパクト投資を推進するグローバルネットワークであるThe Global Steering Group for Impact Investment(GSG)の国内諮問委員会の第19回会合が、10月22日(金)に開催されました。
小宮山委員長からの冒頭発言後、各委員、及び、ゲスト出席者より、インパクト投資に関する国内外の動向に関し、以下の情報共有、及び、議論が行われました。
活動報告1 GSG本部の動向について
特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会代表理事兼GSG国内諮問委員会副委員長の鵜尾雅隆氏より、GSGの理事選挙結果、及び、GSGの戦略策定状況について情報共有が行われました。GSGの理事選挙では、各国の国内諮問委員会による投票の結果、3名の新理事が選ばれたことが紹介されました。また、現在GSGが事業戦略を策定中であり、コロナからの回復の取り組み、NetZero、ポストSDGsも見据えた普遍化、可視化というような方向性の内容が、年内に取りまとめられる予定であることなどについても紹介がありました。出席者からは、インパクト投資に関する日本国内の取り組みを、海外に発信していくことの意義・重要性について意見が出されました。
活動報告2 インパクト志向金融宣言について
事務局の一般財団法人社会変革推進財団専務理事兼GSG国内諮問委員会委員の青柳光晶より、日本国内の複数の金融機関による、環境・社会課題解決を目指す「インパクト志向金融宣言」の署名に向けた動向、及び、宣言の要旨について紹介がありました。続いて、同宣言の起草委員会共同委員長であるりそなアセットマネジメント株式会社執行役員兼責任投資部長の松原稔氏、及び、三井住友信託銀行株式会社チーフ・サステナビリティ・オフィサーの金井司氏より、金融業界がインパクト志向金融に取り組む意義や宣言署名後の活動の展望についてお話頂き、参加者より、同宣言に対する期待が寄せられました。
※インパクト志向金融宣言については、こちらをご参照下さい。
活動報告3 インパクト投資フォーラム2021開催結果について
事務局の一般財団法人社会変革推進財団事業本部長の藤田淑子より、日本におけるインパクト投資の認知向上と市場構築を目的として開催された、インパクト投資フォーラム2021(2021年9月28日)の開催結果について紹介がありました。同フォーラムでは、金融庁金融国際審議官の天谷知子氏、及び、三井住友トラスト・ホールディングス株式会社取締役代表執行役社長の高倉透氏より基調講演を頂いたほか、42名の登壇者による活発な意見交換が行われたこと、金融業界、非営利組織だけでなく様々な業界から延べ430名の視聴申込者があったことなどの紹介がありました。
活動報告4 GSG Global Summit2021 開催結果について
事務局の一般財団法人社会変革推進財団インパクト・オフィサーの小笠原由佳より、GSG Global Summit 2021(2021年10月6~8日)の開催結果について紹介がありました。同サミットでは、民間資金のインパクト投資への動員、途上国におけるインパクト投資の推進、グリーン&ソーシャル、インパクトの透明性・インテグリティなどのテーマについて議論がなされ、43か国から232名が登壇したこと、1,100人の参加登録者があり、途上国からの参加者が3分の1に上ったことなどの紹介がありました。続いて、同サミットに登壇した、独立行政法人国際協力機構上級審議役兼GSG国内諮問委員会委員の武藤めぐみ氏、カタリスト投資顧問株式会社取締役副社長の小野塚恵美氏より、登壇されたセッションの紹介があり、途上国におけるインパクト投資への関心の高まりや、インパクト投資家とのパネルディスカッションへの参加を通じて、日本企業によるサステナブルファイナンス・インパクト投資を通じたイノベーションについて、海外に発信していく必要性が感じられたことなどが紹介されました。
活動報告5 金融庁・GSG国内諮問委員会共催「インパクト投資に関する勉強会」及びIMM-分科会について
一般財団法人社会変革推進財団エグゼクティブ・アドバイザーの安間匡明氏より、2020年6月から7回に亘り開催された、金融庁・GSG国内諮問委員会共催「インパクト投資に関する勉強会」の第一フェーズが終了したこと、また、第一フェーズの総括として同勉強会が発行した「第一フェーズの到達点と今後の課題」の要旨について紹介がありました。これまでの開催を通じて、参加者間でインパクト投資の基本的意義等について一定の理解が得られた一方、日本国内でインパクト投資を本格的に拡大していくための課題として四点があげられました。一点目は、インパクト創出と経済的リターンが相関しているケースが存在するとの認識が広まっていないこと。二点目は、インパクト投資の好事例を増やすために、多様なプレーヤーの呼び込みが必要であること。三点目は、投融資あるいは上場、非上場と言った分野毎、アセットクラス毎にインパクト投資手法の発展度合い、求められる内容が異なり、インパクト投資の実務をより進化させていくためにアセットクラス毎に議論を深めていく必要があること。四点目として、日本から国際的な議論に更に参画する必要があることなどの説明がありました。また、これらの課題などについて、同勉強会の第二フェーズで引き続き議論を行っていく予定であること、勉強会の傘下に株、融資債権についてのIMMの2つの分科会を設ける予定であることなどが紹介されました。最後に、金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議の提言にて、インパクト投資については、今後は同勉強会で議論していくとの言及があったことについて紹介がありました。
※「第一フェーズの到達点と今後の課題」については、こちらをご参照下さい。
活動報告6 Impact Taskforceに関する情報共有
鵜尾雅隆副委員長より、2021年7月にG7サミット議長国の英国政府のイニシアティブにより設置されたImpact Taskforceに関する情報共有がありました。2013年に当時G8サミットの議長国の英国政府が提唱し設置されたタスクフォースが、その後GSGと33の加盟国と地域の国内諮問委員会の設置へ繋がったこと。7月に設置された今回のタスクフォースは、前回のタスクフォースと比較しても、より広く世界各国のビジネス、政府、ソーシャルルセクターリーダーが参加し、インパクトの透明性・インテグリティ、信頼性、インパクト投資を拡大する資金調達手段・民間資金動員の手法について議論・検討し、本年12月に提言を発表する予定であることなどが紹介されました。
続いて、日本から同タスクフォースに委員として参加されている三名の方々より、タスクフォースでの議論の内容や所感などの紹介がありました。まず、アセットマネジメントOne株式会社取締役社長の菅野暁氏より、タスクフォースの主なメンバーや各委員会の議論の内容の紹介があったほか、従来の政府・NGOなどのプレーヤーに加え、投資家や企業などの民間のプレーヤーが主導し、インパクト投資をスケールアップすることを目的として、タスクフォース内で活発な議論が行われていることなどが紹介されました。次に、エーザイ株式会社専務執行役・チーフフィナンシャルオフィサーの柳良平氏より、透明性・インテグリティに関し、実務家の視点を取り込むことの重要性や、その観点からエーザイ株式会社がハーバードビジネススクールとの共同研究として、「従業員インパクト会計」の試算を日本第一号として行っていることなどをワーキンググループに紹介したとのご説明がありました。また、東京大学グローバル・コモンズ・センターダイレクターの石井菜穂子氏より、インパクト投資を拡大する資金調達手段・民間資金動員の手法に関し、アセットマネージャーやアセットオーナーが議論に参加しており、インパクト投資の拡大を可能にするための仕組みや、システムチェンジ(この場合は、サステナビリティ問題に根本的に立ち向かう場合の、金融の役割や経済システムの変革のことを言う)などについて活発な議論が行われているとの紹介がありました。参加者からは、公正な移行(Just Transition)やシステムチェンジの考え方や、これらを取り巻く世界の潮流などについて、活発な情報共有・意見交換が行われました。
※Impact Taskforceが2021年12月13日に公開した提言書は、こちらをご参照下さい。
活動報告7 IMMに関する海外の動きについて
一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)代表理事の今田克司氏より、IMMに関する海外の動きとして、以下の点をご紹介頂きました。IMMに関しては、IFCを中心に作成されたインパクト投資の運用原則(Operating Principles for Impact Management)が広く認知されており、135機関(2021年8月時点)が署名しているが、日本からは3機関の署名に留まっていること。インパクトパフォーマンスの数値化、標準化に関し、GIINのCOMPASSや、UNEP FIのImpact Analysis Toolなどのツールが出来つつあること。SDGsに資する投資・事業の世界基準や認証制度について、UNDPによる「SDGインパクト」の検討が進んでおり、2022年にはPEファンド、SDGs債(ボンド)、事業について認証が開始される見込みであること。ブルーマークにより、インパクトウォッシングを防止するための仕組みの開発が行われていることなどが紹介されました。また、開示に関する動きとして、GRIが、本年10月に新しいユニバーサルスタンダードを公表し、インパクトを中核に据えるという流れになってきていること。IFRS財団が、国際会計基準審議会(ISSB)を模したインターナショナルサステナビリティスタンダーズボードを作成中であること。COP26において、国際会計基準の中にサステナビリティスタンダードを入れていこうという動きあり、その中でもインパクトは中核的な課題になると予想されることなどが共有されました。また、SIMIのグローバルリソースセンターにおいて、こういった国内外の動向を紹介していることについてもご紹介がありました。
※SIMIグローバルリソースセンターは、こちらをご参照下さい。
委員及び参加者からは、GSG国内諮問委員会の参加者が多様化していることを歓迎する声や、インパクト投資の実践例などを国内外に積極的に発信していくことについて期待する声が寄せられました。
次回は2022年5月か6月を予定しています。