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金融庁・GSG国内諮問委員会共催「第3回 インパクト投資に関する勉強会」が開催されました。
開催レポート 金融庁共催勉強会

インパクト投資に対する金融市場関係者と行政の理解を深め、国内外の社会課題解決に向けたインパクト投資への取り組みの意義と課題を議論する「インパクト投資に関する勉強会」の第3回目が、11月20日(金)にオンラインにて開催されました。

第1回(6月開催)・第2回(9月開催)では、「インパクト投資」の基本的な概念整理や、インパクト投資への取り組みや立ち位置の多様性について議論してきましたが、第3回の勉強会は、委員からも関心の高い「インパクト評価」をテーマに開催されました。「インパクト評価」は,海外ではImpact Measurement & Management(以下「IMM」)という概念として議論されることが多いため、この勉強会ではIMMの定義や目的等に関して最新の議論を共有したうえで、インパクト創出の意志(intentionality)、多様なプロダクトにおけるIMMのあり方、資金提供者の貢献、インパクトウォッシングの抑止等を含む多数の論点について意見交換がなされました。

冒頭に座長の高崎大学経済学部教授水口剛氏、副座長の金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー池田賢志氏の両者からご挨拶をいただいた後、事前に配布されたカリム・ハルジ氏(注)による動画「Impact Measurement and Management (IMM):Trends, Approaches, and Prospects」について、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)代表理事の今田克司氏から、インパクトの測定を「How/どのように行うのか」ではなく、「Why/なぜ行うのか」から考え始める必要性等について解説を頂きました。その後水口座長より、「IMMにおけるマネジメントとは何か」、「IMMの主体は投資家なのか事業者なのか」、「エンゲージメントとマネジメントは切り分けて考えるものか」、「Measurement、Assessment、Valuation、Evaluation、Rating、Scoringなどがあるがどう違うのか」、「Intention→ Integration→ Integrity でIntegrityに力点が置かれているのはなぜか」といった質問が出され、今田氏により改めて解説がなされました。

(注)IMM及びインパクト投資の専門家であり、オクスフォード大学サイードビジネススクールにて、インパクト・メジャメント・プログラムを主催。カナダ在住。

さらに、三井住友信託銀行フェロー役員金井司氏、ソーシャルインベストメントパートナーズ理事白石智哉氏、日本政策投資銀行執行役員竹ケ原啓介氏をパネリストとして迎え、水口座長、今田氏を含めた5名で活発なパネル討議が行われました。特に、融資、未公開企業株投資、政策金融というパネリストの経験の違いに応じて、今後の取組に向けた共通点や相違点が浮き彫りになりました。

こうした議論を踏まえ、本勉強会では初めての試みであるブレイクアウトセッションを行い、「インパクト評価の5つの秘訣をリスト化してください」「インパクト評価で金融商品が支持を得られるようになるためには何が必要ですか」という2つの課題について、複数のグループに分かれ議論が行われました。議論が交わされたポイントとしては、インパクト創出意図の明確化や投資家と事業者との共有が重要であること、個人を始めとした資金供給者の意識改革が重要であること、評価はポートフォリオレベルで行われるのか個別事業レベルで行われるのか、といった議論や、評価実務に関して定性と定量評価のバランスが必要ではないか、評価・管理の費用についてどう考えるか、といった点が紹介されました。また、インパクト評価を普及させることとインパクトウォッシングを避けることのバランスの重要性についても指摘がありました。

最後に、本勉強会事務局のSIIF事業本部長菅野文美より、インパクト評価・マネジメントに関し、世界でどのようなフレームワークやツールが開発されつつあるのか、そして、それに対して日本企業が参加するにはどのような方法があるのか、という点について情報を提供しました。

当日は、金融・市場関係者、事業者、業界関係者等からなる委員31名が出席し、関係省庁・オブザーバーも含めると約120名程度の参加がありました。

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次回は、1月29日の開催を予定しています。

資料

※資料1~3につきましては公開しておりません。




<座長・副座長・登壇者プロフィール:登壇者は五十音順>

座長 高崎大学経済学部 水口剛教授:
商社、監査法人などの勤務を経て、高崎経済大学教授。博士(経営学・明治大学)。専門は責任投資(ESG投資)、非財務情報開示など。環境省グリーンボンド・グリーンローン等に関する検討会座長、ESG金融ハイレベルパネル委員、ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース座長、NPO法人社会的責任投資フォーラム共同代表理事などを歴任。

副座長 金融庁 池田チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー:
2019年3月、金融庁に「チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー」のポストが新設されたことに伴い同職に就任。同職においては、気候変動関連の財務情報開示に係るTCFD提言の日本における実施を担当 すると同時に、金融庁内のSDGs取組戦略プロジェクトチームの事務局を務めるなど、サステナブルファイナンスに関する職務を幅広く所掌。

社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI) 今田克司代表理事:
米国(6年)、南アフリカ(5年半)含め、市民社会強化の分野でのNPO/NGO活動25年。SIMIでは、2016年の創設時から関わり、現在、法人化後代表理事に就任。2013年帰国後、「役に立つ評価」の評価文化やインパクト・マネジメントを根づかせるために尽力している。日本評価学会理事、休眠預金等活用法における指定活用団体である日本民間公益活動連携機構(JANPIA)評価アドバイザー、国際協力機構(JICA)事業評価外部有識者委員会委員等を歴任。

三井住友信託銀行株式会社 金井司チーフ・サステナビリティ・オフィサー:
1983年大阪大学法学部卒。同年、住友信託銀行に入社しロンドン支店、年金運用部等を経て、2003年より企画部。サステナビリティ部署の立ち上げを主導し2005年よりグループのサステナビリティ業務全般を統括する。2018年4月よりフェロー役員兼チーフ・サステナビリティ・オフィサー。この間、企業年金初のESG (SRI)ファンドの開発や、環境不動産業務の立ち上げ、ジェロントロジー業務の開発、世界初の資金使途のないポジティブ・インパクト・ファイナンスの開発等を手掛ける。2011年に21世紀金融行動原則の初代運営委員長、現在は運営委員兼「持続可能な地域支援ワーキンググループ」座長。環境省「ESG地域金融タスクフォース」、「ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース」、内閣府「地方創生SDGs金融調査・研究会」委員等。著書は『CSR経営とSRI』『サステナブル不動産』『自然資本入門』等(いずれも共著)。

一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ 白石智哉理事:
1986年一橋大学卒業後、2000年(株)ジャフコ事業投資本部本部長、2004年ペルミラ(欧州PEファンド)日本代表を務めた後、2012年ソーシャル・インベストメント・パートナーズ 代表理事に就任(現在は理事)。2015年フロネシス・パートナーズ 代表取締役。主にシリコンバレー等の海外でVC投資の経験を積んだのち、1998年に帰国後はPrivate Equity (Buyout)投資に携わる。現在PE投資ファンドであるフロネシスの代表を務めるとともに、日本初の寄付型インパクト基金であるソーシャル・インベストメント・パートナーズの運営に携わる。GSG日本諮問委員会では2014年の設立当初から委員を務める。

株式会社日本政策投資銀行 竹ケ原啓介執行役員:
1989年日本開発銀行入行。2005フランクフルト首席駐在員、2012年環境・CSR部長、2016年産業調査部長、2017年より現職。DBJ環境格付融資の開発を担当するなど、同行の評価認証型融資業務に長く従事。現在は、産業調査本部副本部長として、同行産業調査活動と非財務評価業務などを担当。多くの企業のサステナビリティレポートへの意見やマテリアリティ特定作業等をサポートしている他、環境省、経済産業省など各種委員会に参加。

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