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調査研究

金融庁・GSG国内諮問委員会共催「第4回 インパクト投資に関する勉強会」が開催されました。
開催レポート 金融庁共催勉強会

 インパクト投資に対する金融市場関係者と行政の理解を深め、国内外の社会課題解決に向けたインパクト投資への取り組みの意義と課題を議論する「インパクト投資に関する勉強会」の第4回目が、1月29日(金)にオンラインにて開催されました。

 第4回では、未上場株式会社、特に、スタートアップ企業に対するインパクト投資における「インパクト測定とマネジメント」(Impact Measurement & Management、以下「IMM」という)に焦点を当て、投資家としてインパクト創出にかかる戦略を立てた上で投資先のIMMを実施していくことの重要性、未上場株式に対する投資家にとってのIMMの実践に関する課題、起業家側から見たインパクト投資のメリットや課題などを共有した上で、今後、未上場会社向けのインパクト投資を増やすためには何が必要か、未上場会社向けインパクト投資の出口はどうあるべきかなどを議論しました。

 冒頭に座長の高崎経済大学副学長水口剛氏、副座長の金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー池田賢志氏の両者からご挨拶をいただいた後、トリオドス・インベストメント・マネジメント元マネージングディレクターマリルー・ファン・コルシュタイン・ブルワーズ氏、Triodos Food Transition Europe Fundのファンドマネージャーであるイザベル・ローランサン氏による事前に共有された同ファンドに関する動画について、社会変革推進財団(SIIF)事業本部長の菅野文美より、ファンドの概要やIMMの具体的なフレームワークやインパクトKPIなどを解説しました。特に、トリオドス銀行は、同銀行グループ全体でのインパクト創出のビジョンを作成・公開した上で、その子会社であるファンドとして整合性を持ったインパクト投資戦略があり、その上でポートフォリオレベル及び個社レベルでIMMを実施している点が強調されました。

 続いて、日本の未公開企業向けインパクト投資ファンドの事例として、新生企業投資シニアディレクター黄春梅氏より「はたらくFUND」の概要、ファンドにおけるセオリーオブチェンジ、IMMのプロセス、評価ツールや手法、評価結果の活用、インパクトIPOへの取り組みなどについて説明がありました。さらに、第⼀⽣命保険株式会社オルタナティブ投資部イノベーション投資室⻑片岡正史氏より、同社の直接投資によるインパクト投資事例とそのインパクト創出戦略が紹介されました。また、ユニファ株式会社取締役CFO星 直人氏からは、インパクト投資を受けている起業家の立場から、そのメリットと課題が紹介されました。メリットとしては、インパクト測定・開示に関するサポートが受けられること、経営陣のモチベーション維持・新規人員採用へのポジティブな効果、社会課題解決型企業としての知名度向上等が紹介されました。一方で、課題・懸念点としては、スタートアップのリソース制限という現実を理解いただく必要があるということ、インパクトを重視するがゆえに、経済性を軽視するというバイアスを持たれるケースがあること等が指摘されました。

 その後、水口座長、ライフイズテック株式会社石川孔明氏、片岡正史氏、グローバル・ブレイン重富渚氏、新生企業投資シニアディレクター高塚清佳氏によりパネルディスカッションを行い、それぞれの企業にてどのようにIMMを考え、実践しているのか、どうしたら日本で未上場株式向けのインパクト投資が増えるか、政府に期待する役割といった点ついて議論がなされました。

 各投資先がどのような社会課題解決に向けた視点を持っているのかを投資家が理解し、投資先とともにインパクトの創出戦略と指標を考えていくことが重要であり、また、投資先事業のそれぞれの性格に適した評価の必要性が指摘されました。また、社会課題の現場を反映しながら投資効果を可視化する指標の開発や、比較可能なデータを蓄積することが重要であるとの意見がありました。さらに、IMMを行うために十分な組織体制を確保すること、インパクトを出すことが企業のサステナビリティに直結すると訴えていくことも必要であり、さらに、スタートアップ企業に対する政策的な公的支援策の必要性についても指摘がなされました。

 その後、ブレイクアウトセッションを行い、「日本で未上場株式に対するインパクト投資を増やすには何が必要か」「未上場株式に対するインパクト投資の出口はどうあるべきなのか」について、複数のグループに分かれて議論が行われました。前者については、バイアウトファンドや財団を含めた多様なプレイヤーの流入、ベストプラクティスの共有、ベンチャー業界そのものの推進のための規制や優遇措置などの必要性や、ブレンディッドファイナンスのようにリスクを官民が共有する仕組みなどが挙げられました。後者については、IPO、M&Aだけではない多様な出口の必要性が指摘され、税制優遇や証券取引所による上場へのサポートも求められるとの意見も出されました。

 当日は、金融・市場関係者、事業者、業界関係者等からなる委員33名が出席し、関係省庁・オブザーバーも含めると約130名程度の参加がありました。

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次回は、4月15日の開催を予定しています。

資料
第4回 「インパクト投資に関する勉強会」 議事次第
資料4_「はたらくファンド」(新生企業投資黄春梅様 説明資料)
資料6  「インパクト投資に関する勉強会」 次回以降のテーマ(案)
※他の資料につきましては公開しておりません。

<座長・副座長・登壇者プロフィール:登壇者は五十音順>

座長 水口剛氏 高崎経済大学教授、副学長:
商社、監査法人などの勤務を経て、高崎経済大学教授、副学長。博士(経営学・明治大学)。専門は責任投資(ESG投資)、非財務情報開示など。環境省グリーンボンド・グリーンローン等に関する検討会座長、ESG金融ハイレベルパネル委員、ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース座長、金融庁サステナブルファイナンス有識者会議座長、NPO法人社会的責任投資フォーラム共同代表理事などを歴任。

副座長 池田賢志氏 金融庁 チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー:
2019年3月、金融庁に「チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー」のポストが新設されたことに伴い同職に就任。同職においては、気候変動関連の財務情報開示に係るTCFD提言の日本における実施を担当 すると同時に、金融庁内のSDGs取組戦略プロジェクトチームの事務局を務めるなど、サステナブルファイナンスに関する職務を幅広く所掌。

<海外事例解説>
マリルー・ファン・コルシュタイン・ブルワーズ氏 トリオドス・インベストメントマネジメント 元マネージングディレクター
30年にわたるオランダのトリオドス銀行グループの活動を通じて豊富なインパクト投資の経験を有し、グローバルなインパクト投資のネットワークにおいて現在も数多くの要職を務める。グローバル・インパクト・インベスティング・ネットワーク(GIIN)の理事会メンバー、国際開発協力諮問委員会(AIV/COS)のメンバー、オランダの金融サービスにおける女性のための諮問委員会(WIFS)議長、SIDIAN BANK Limited 取締役など、数多くの役職を歴任。2019年3月にはオランジュ・ナッソー勲章を受章。

イザベル・ローランサン氏 Triodos Food Transition Europe Fund ファンドマネージャー:
新興国市場のプライベート・エクイティ投資業務を10年以上経験した後、2019年3月にTriodos Food Transition Europe Fundの投資チームに参加。2020年11月より同ファンドマネージャーに就任。また、ファッションアパレル業界にて、持続可能な循環型イノベーションに焦点を当てたスタートアップアクセラレーターを立ち上げた。

<登壇者 *所属組織の五十音順>
重富 渚氏 グローバル・ブレイン株式会社 プリンシパル:
グローバル・ブレインにて現在はヘルスケア領域を中心に投資活動に従事。社内SDGs活動推進の役割も担う。国内の社会起業家とのネットワークを構築し、社会起業家と日本の大企業をマッチングするイベントを実施するなど、大企業と社会起業家によるインパクトの創出を支援。

高塚 清佳氏 新生企業投資 シニアディレクター:
新生銀行にて一貫して自己勘定投資業務に従事、証券化、海外不動産ノンリコースローン、ベンチャー投資、PEファンドの組成およびモニタリング、オフショア子会社の取締役等を歴任。2017年1月、新生企業投資にてインパクト投資チームを設立。邦銀系初のインパクト投資ファンド「子育て支援ファンド」および2号ファンド「はたらくFUND」を創設。新生インパクト投資(株)代表取締役。日本評価学会認定評価士。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」受賞。

黄 春梅氏 新生企業投資 シニアディレクター:
新生銀行にて一貫して自己勘定投資業務に従事、ベンチャー投資、バイアウト投資、ファンド投資などを担当。2017年1月、新生企業投資にてインパクト投資チームを設立。邦銀系初のインパクト投資ファンド「子育て支援ファンド」および2号ファンド「はたらくFUND」を創設。日盛金融控股股份有限公司(台湾)取締役、新生インパクト投資(株)代表取締役、GSG国内諮問委員会委員、一般社団法人日本CFA協会理事など。米国公認会計士、CFA協会認定証券アナリスト、日本評価学会認定評価士。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」受賞。

⽚岡 正史氏 第⼀⽣命保険株式会社 オルタナティブ投資部イノベーション投資室⻑:
第⼀⽣命保険にて、特別勘定運⽤部、運⽤企画部等を経て、NY現地法⼈にてオルタナティブ投資のマネジャー発掘およびデューデリジェンス業務、運⽤会社との戦略提携業務に従事。2014年よりオルタナティブグループにて、ヘッジファンド/PE/インフラ/ベンチャーファンド投資を担当。2019年度よりオルタナティブ投資部にてベンチャー投資チームを主導。

星 直人氏 ユニファ株式会社 取締役CFO:
モルガン・スタンレー証券の投資銀行本部にて約12年間、テクノロジー・金融・コンシューマー領域を中心に、国内の経営統合案件や米国関連のクロスボーダーM&A案件を主導。一般的なM&A業務に加えて、アクティビスト対応や企業価値向上策に関するアドバイザリー業務にも従事。2019年にユニファに参画し、CFOとして財務戦略や各種戦略的施策を主導。

石川 孔明氏 ライフイズテック株式会社 取締役CFO:
子どもたちの可能性を伸ばすためのプログラミング教育を提供する同社の取締役CFO兼インパクトオフィサー。ソーシャルインパクトと収益性を両立するマネジメントや資金調達・投資家コミュニケーションを研究しつつ実践。

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