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金融庁・GSG国内諮問委員会共催「インパクト投資に関する勉強会フェーズ2」第4回勉強会が開催されました。
開催レポート 金融庁共催勉強会

2020年6月より開催している「インパクト投資に関する勉強会」のフェーズ2第4回勉強会が、2023年1月12日(木)にオンラインにて開催されました。本勉強会は、インパクト投資に対する金融市場関係者と行政の理解を深め、国内外の社会課題解決に向けたインパクト投資への取り組みの意義と課題を明らかにし、我が国金融業界の持続的な発展に資する推進の在り方について議論することを目的としています。

第4回勉強会では、インパクト投資のための環境整備をテーマとして取り上げ、インパクト投資の発展に向けた課題や必要な環境整備等について議論しました。

冒頭に、座長の高崎経済大学学長水口剛氏、副座長の金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー池田賢志氏の両者から、ご挨拶をいただきました。水口座長は、政府全体としてインパクト投資を推進していこうとの潮流となってきていることを挙げ、政府や金融庁にしてほしいこと/しないでほしい事について、インパクト投資に関わっている本勉強会メンバーと議論し、金融庁に設置された「インパクト投資等に関する検討会」での議論にも反映させていきたい旨、コメントしました。池田氏は、政策としてどのようにインパクト投資を推進していくかを考えていく上で、本勉強会とのシナジーを実現していきたいとの期待を述べました。

続いて、インパクト投資の課題や展望、環境整備等について、事務局を務める社会変革推進財団(SIIF) Impact Economy Lab所長の菅野文美、りそなアセットマネジメント責任投資部長の松原稔氏、PwCサステナビリティ合同会社パートナーの磯貝友紀氏、PRI理事を務める日本生命執行役員の木村武氏の4名からご発表頂きました。

まず菅野より、インパクト投資の現状と今後の課題・施策について包括的にまとめたプレゼンテーションを行いました。施策として挙げたのは、①インパクトに関するデータやエビデンスの整備、②インパクト企業の育成・可視化のための認証やプロモーション、③触媒的な資金(Catalytic Capital)の供給拡充、④インパクト人材の教育・育成・流通の促進、⑤官民/民民連携型プラットフォームの設立の5点であり、海外の事例も紹介しつつ、政府の役割案を提示しました。また、昨今の動向として、インパクト投資の枠を超えて「インパクトエコノミー」の議論へと発展していることを説明し、グローバル水準の環境整備を進めていくことの重要性を挙げました。

続いて松原氏より、インパクト投資の期待と環境整備についてご発表頂きました。りそなアセットマネジメントにて取り組んでいるインパクト測定・マネジメントのご経験ならびに、インパクト志向金融宣言の活動を紹介するとともに、今後インパクト投資が加速していくために必要だと感じる環境整備について以下の2点を挙げられました。1点目はブレンデッド・ファイナンスの推進であり、触媒的資本として譲許的ファイナンスを提供するアプローチ等を紹介し、今後国内での展開について期待を述べられました。2点目として、ロジックモデル構築のためのエビデンス蓄積を挙げられました。インパクト投資で必要となるロジックモデルの作成においては、EBPMの知見も活用しつつ、エビデンス・データの蓄積や、オープンに活用できるツールやフレームワークの発展が必要ではないかとのご意見を述べられました。

続いて、磯貝氏より、インパクト投資への期待と課題について発表頂きました。まずはインパクト投資との出会いとして、ご自身のアフリカでの経験を共有し、素晴らしいビジネスアイディアを持ち着実な成長とリターンが見込めるスタートアップが存在する一方で資金が流れていないという状況であったことを挙げました。そのような中で、課題解決とリターンの両方を生み出すことが可能なのがインパクト投資であり、日本の流動性ある資産を途上国の成長機会につなげていくことへの期待を述べられました。途上国でのインパクト投資のハードルとしては、特にアフリカ等では市場の未成熟や情報格差等が課題となり、民間金融機関にとってリスクが高いと評価される点を説明しつつも、日本全体の課題として、民間企業がリスク・アバートな傾向にあることを指摘し、リスク許容度を上げる必要があるのではないかと問題提起をして頂きました。

最後に、木村氏より、アウトカム志向の責任投資と今後の課題についてご発表頂きました。責任投資については、投資家と実世界との関係から2つの考え方に分けられることについて解説しました(ESG課題をインテグレーションする「守りの責任投資: Future taker」と、サステナビリティ・アウトカムを創出する「攻めの責任投資: Future maker」)。それぞれの基礎となるレポートを紹介した上で、「攻めの責任投資」のベースとなる概念「Investing for Sustainability Impact (IFSI)」を紹介し、今後のトレンドとして、アウトカムが企業と投資家の対話の中心テーマになっていく可能性を述べられました。また、PRIが昨年夏から今年にかけて実施した署名機関向けにコンサルテーションの内容や、PRI in Person 2022バルセロナ大会での議論からも、責任投資の進化のなかでIFSIの考え方やアウトカム志向が浸透してきているとの所感を述べられました。アウトカム志向の”根拠”によってエンゲージメントの範囲がコーポレート・エンゲージメント、政策エンゲージメント、受益者エンゲージメントと異なってくるという点についても解説されたほか、日本のPRI署名機関数がブラジルや中国に抜かれた事にも触れ、日本の責任投資の底上げ、アウトカムやインパクト志向の裾野拡大への期待を述べられました。

上記プレゼンテーションの後、水口座長のファシリテーションのもと4名の発表者でパネルディスカッションを行いました。まずは、インパクトデータやエビデンスの整理および情報の蓄積に関して、政府に期待する役割について議論しました。松原氏は、インパクトの因果性やロジックモデルの整理に苦労したという経験から、全体的な裾野拡大のためには、”インパクトが実現される道筋”について、コンソーシアムや官民共同の枠組みの中で情報共有されると良いのではないかと提案しました。インパクト志向金融宣言の枠組みのように、実践者がリードして取組みが進んでいるような場合は、政府は特に何もしなくてよく、困ったときに手を差し伸べてくれればよいのではないかとの見解を述べられました。

途上国で課題となっている市場の未成熟さや情報不足という点について、日本ではどうするべきかとの問いに対し、磯貝氏は、基本的には民間企業が適度なリスクを取りながら自ら対応し、それでもなお問題があるところに政府の支援があればよく、基本的に民間の力が最大限に発揮できるような政策であるべきとの見解を述べました。また、データについては、民間企業が競争力・差別化を図るためのデータと共有資産としてのデータの2種類があると指摘し、インパクト投資に関するデータの大部分は後者であり、後者は公共財であるため皆で作って行く必要があるとの見解を述べました。

政府への期待について、木村氏は以下の2点を挙げました。ひとつは、エコシステムという観点から、”投資家と企業の対話の中心テーマにアウトカムやインパクトを据える”という考えを政府が金融業界全体に広げていくべきという点です。政府は、狭義のインパクト投資ファンドの議論や各論を超えて、責任投資全体としてアウトカム志向にしていくというモメンタムを広げるために、アセットクラス横断かつ大企業やスタートアップも共通の方向性として”アウトカムキャンペーン”を推進していくべきではないかとの意見を挙げました。2点目として、責任投資やインパクト投資の裾野拡大のために公的年金のアウトカム志向を促進していくこと、PRI署名を後押しすることを挙げました。PRI署名の拡大については、水口座長も、政府はKPIを設定して促進してはどうかとの意見を述べられました。木村氏は、日本は世界のGDPの5%を占めているが署名機関数は全体の2%に過ぎないというデータを挙げ、署名拡大の必要性を指摘しました。

菅野からは、GSGグローバルで整理されている政府の役割として、市場形成、市場規制、市場参加の3つがあることを紹介し、政府は規制を行うよりも、民間による探求活動をどのように推進していくかという視点で、民間を応援する立場であるべきとの意見を述べました。インパクトデータに関しては、磯貝氏が挙げた2つの分類を取り上げ、インパクトデータ・プラットフォームはまさに公共財である点を指摘しました。民だけのメカニズムだと情報開示に限界があったり測りやすいインパクトに偏ったりする可能性があるため、全体的な方向付けや政策との連動(重要課題、重要アウトカムの設定)等については政府と連携することで公共財となっていくのではないかとの意見を述べました。

水口座長は、議論の総括として、インパクトエコノミーへの進化とは、アウトカム中心の考え方への移行や受託者責任の解釈の変更も伴う”金融のパラダイム変革”であると指摘し、現在まさにパラダイム変革が起きつつあるのではないかと指摘し、また、成長機会と社会課題がある途上国への投資を増やしていくにはどうすればよいかという点を改めて提起しました。最後に、各パネリストからコメントを述べて頂きました。金融のパラダイム変革に伴うこれからの金融の役割についても引き続きディスカッションしていきたい、アフリカで活躍する日本の起業家も増えているため彼らの課題を理解し成長をサポートする仕組みづくりが求められる、海外から日本への投資という意味では情報格差があるのが現状であり、日本の課題やインパクトデータの可視化が求められる、グローバルなインパクト投資の枠組みに日本のコンテクストをインプットしていく必要もある、新しい官民の連携の在り方が求められている、等の意見が挙がりました。

委員も交えたオープンディスカッションでは、以下のような様々な意見が挙がりました。
✔ 
具体的な資金の出し手ごとに、状況を整理して議論を進めていくべき。例えばアセットオーナーの中でも生命保険と年金では課題が異なるし、デッドかエクイティによっても異なる。金融庁には背中を押すような施策を期待し、例えばIMMの標準化などのインフラ整備を官民で進めていくことが必要であると考える。

✔ インパクトファイナンスの中でも融資の金額規模は大きく、間接金融も考えないと片手落ちになる。融資ではエンゲージメントを通したアウトカムを追求することになるが、特に中小企業向けインパクト融資とベンチャーキャピタル投資とは非常に似ていると実感しており、スタートアップなのか創業50年なのかという違いはあれど、IMMの手法は基本的に変わらない。ブレンデッド・ファイナンスでも、トランシェを分けて公的資金、エクイティ、その後はデッドへとつながっていくため、投資も融資も含めてインパクトエコノミーのエコシステムを形成していくことが重要。

✔ インパクトパフォーマンスが求められるようになればなるほど、データの存在は重要であり、投資による介入あり/なしの比較といったデータ等、オープンデータを推進する政府の役割は大きい。因果性の追求については、アトリビューションの議論よりもスレッシュホールド(閾値)の議論のほうが重要になってきている(インパクトのABCの議論を整理したウェビナーをSIMIで開催予定)

✔ Catalytic Capital(触媒的資本)について、アメリカでは民間財団がその役割を果たしてきたが、日本にはインセンティブとしてそのような仕組みが無いため、政府関係者に検討を期待したい。

✔ グローバル連携として、規範づくりに参加していくことも重要である。

✔ エコシステム・ビルディングを行っていくには、投資家、企業、政府だけではなく中間支援の必要性も大きく、そのための資金を誰が出すのかも含め検討していく必要がある。政府には、モメンタムづくりの役割も期待したい。

✔ インパクトエコノミーへのシフトは明確であり、長期的な目線で資産運用を考えた場合にインパクトは重要。リスクとリターンが見合うことを前提として、インパクトを意図した投資を推進していくが、アウトカムに関する情報がもう少し整理されていくとありがたい。そうすれば、よりインパクトが大きいところへの投資が進めやすくなる。目指す方向として、インパクト投資を広げていきポートフォリオ全体におけるアウトカムの総量を増やしていきたい。

✔ どのようなファンドがどういった投資を行っているかの全体像がつかみにくい。そのような情報にアクセスしやすくなると良い。

✔ 自分たちが実現したいアウトカムを選び出して、意志を明確化して投資していくことが重要。SDGs実現とアウトカムの繋がりも精査していきたい。

✔ インパクト投資を実行するなかで、単独では知見やスキル、情報が足りないという状況があり、官民/民民のコラボレーションの重要性を感じている。コラボレーションしてアウトカムを実現していくのが重要と改めて認識。

✔ インパクト投資における投資期間の議論が必要になるのではないか(特に短期では難しい)

✔ 援助機関として政府に期待することは、日本と途上国にまたがる成長戦略を示して頂きたいという点。これまでの開発援助では、途上国でのインパクトを目指しつつ日本の経済権益の拡大も意図し、投資を促進するための環境・インフラ整備や人材育成に注力し、工業化を推進してきた。しかし、資源制約等が顕在化するなか、工業化を経ずにサステナブルな成長実現を求める途上国も増えており、矛盾が生じている。政府と一緒に、国内外を隔てない成長戦略について議論していきたい。

✔ 日本におけるインパクト投資の大きな課題は受け皿が圧倒的に少ないこと。上場前のプライベート市場から問題があると言える。アメリカと日本における、IPOを含む資金調達時のワードのトレンド分析を行ったところ、アメリカでは公平や金融包摂、サステナブル等、社会の在り方にマッチさせるようなワードで資金調達を行っているが、日本ではAIやテクノロジー、データ等、企業のスキルに関する内容で資金を獲得していることが分かり、大きなギャップがあった。PEからきちんと育てて、IPOやセカンダリーにつなげていくという道筋の環境整備が必要ではないか。

活発な議論を受け、副座長の池田氏は、文字通り忌憚のない意見・提言への感謝を述べ、金融庁にて整理する旨コメントしました。座長の水口氏は、「インパクト投資の拡大」と「インパクトエコノミーへの進化」という双方からのアプローチが必要であると総括しました。また、個別の金融機関の話だけではなく、金融システム全体、ひいては社会システム全体を構想する力が必要とされる議論であるという点を挙げ、今後も金融庁の検討会や本勉強会で引き続き議論を続けるとともに、様々なプラットフォームで議論されることへの期待を述べました。

当日は、金融・市場関係者、事業者、業界関係者等からなる委員38名が出席し、関係省庁・オブザーバーも含めると約144名の参加がありました。

次回は、2023年5月の開催を予定しています。

資料
フェーズ2第4回「インパクト投資に関する勉強会」議事次第
資料1  インパクト投資の今後と環境整備_SIIF菅野プレゼン資料
資料2  アウトカム志向の責任投資_木村様プレゼン資料

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