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金融庁・GSG国内諮問委員会共催「インパクト投資に関する勉強会フェーズ2」番外編が開催されました
開催レポート 勉強会・ワーキンググループ

「「インパクト投資に関する基本的指針(案)」についての意見交換」

本年6月に、昨年より金融庁により設置された「インパクト投資に関する検討会(以下、「検討会」)にて検討が進められていた「インパクト投資に関する基本的指針(案)」が公表されました。この度、金融庁、「インパクト投資に関する勉強会」の番外編として、「インパクト志向金融宣言」と共催で、指針案についての説明会・意見交換会を実施しました。

  冒頭に、座長の高崎経済大学学長水口剛氏、副座長の金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー池田賢志氏の両者から、ご挨拶をいただきました。検討会の副座長でもある水口座長は、「先日公表された基本的指針案の最終化に先立って、様々な意見が出ているので、それを交換する場として会を設けました」とコメントしました。池田氏は「勉強会と検討会の出会いの場として意義があるので、忌憚のないご意見をいただきたい」と述べました。

  続いて、金融庁のサステナブルファイナンス推進室長 西田 勇樹氏より「インパクト投資に関する基本的指針(案)」について、どのような議論があったかが紹介されました。西田室長からは、「インパクト投資は勉強会での議論の成果もあり近年注目が集まっている一方、まだまだ機関投資家・金融機関等の間でその概要・基本的意義等について十分知られていない現状があること」、「検討会では、インパクト投資の基本的内容・意義をどう位置付けるかを含めてご議論を頂いたこと」、そして、「6月に公表した報告書と基本的指針案(パブリックコメントを10月10日まで実施中)では、インパクト投資を、投資を通じて社会全体の成長・持続可能性の向上を図っていく点でサステナブルファイナンスの一つと整理しつつ、特に個別の投資を通じて実現を図る課題等を特定して実施されるものと位置付けていること」等の説明がありました。また、「投資として収益確保を図っていくことは前提となっている一方、その水準等は各投資家・資金等によって異なる」、「指針案はインパクト投資として一般に期待されていることを明らかにして関係者間の共通理解を持つことを目的としており、一律のルールを導入し市場を制約する趣旨でない」といった趣旨も記載があるといった説明がありました。

  その後、検討会の委員も含む参加者より、様々な意見が出されました。指針案が公表されたことへは概ね好意的な意見が多く、このように意見交換ができる場への感謝も聞かれました。一方で、要件の新規性・追加性、「要件」という言葉の使い方などについては、「(投資先によっては)あまり確保できない」、「何が新規性か具体例が欲しい」、「要件という言葉は厳しいので、「要素」’「特性」はどうか」などの意見が出されました。また、「第三者的機関のコンサルへの依存を懸念する」、「具体例は、ネガティブな面を言えば、型を作ってしまうことで、その型に当てはめればインパクト投資と言えるというリスクが高まる。」といった懸念も挙がりました。

 その他、日本では海外に比べてデットの割合が高く、「融資期間とインパクト創出の時間のギャップを感じる」という意見や、指針案の国際的な基準との整合性については、委員から「基本的にこの指針案は国際的な議論と整合性を持ちつつ、日本の文脈を入れている」との説明がありました。

 日本のインパクト投資は、海外に比べて認知度が低く、儲からないというイメージも根強く残っているため、発信していくことで認知度を高め、より市場も広がっていくことを期待したいとの声が多くの参加者から聞かれました。①今後施策が継続的に実行されていくためには具体的に何が必要かを言語化して共通認識を持つこと、②役割分担の提案、の議論が重要との指摘もありました。

 要件4 新規性については、以下のような意見が出されました。
 ▶受託者責任の整理が重要。AOの支持を得て社会インフラ・社会課題へ向き合う姿勢が明確になるのではないか 

  • 具体例や事例の明示列挙があるとスタートアップ側としては有難い
  • 「市場や顧客に変化をもたらし又は加速し得る新規性や優位性を見出し支援していくこと」の点が重要と感じており、ガティブインパクトを減らしポジティブインパクトを増加させることを融資で後押ししていきたい。
  • 特徴的なのが「アクセラレーション」という言葉。「投資先企業等との対話等についても、企業等の有する新規性・潜在性を引き出し、市場の開拓・創出・支持の実現につながるよう実施していくこと」というのは先進的。
  • グローバルの基準と比べても異なるし、自分の投資先と当てはまらないのではないかとの色々な不安を生んでいる。インパクト投資を広めたいという観点からは、逆効果となるのではないか。
  • 中小企業のPIFで必ずしも全部新規性があるということはないと感じている。国内440件ほどのPIFのなかで、創業企業に対するPIFは少なく中小企業がメイン。報告書でも、創業企業のみでなく中小企業を含めた形で記載されると良い。
  • リターンもインパクトも出していくには、何かしらの変化が必要という点で、新規性が入っていると思っている。
  • 全てにおいて高い水準を求めているわけではく、多様なインパクト投資を前提に書かれている。
  • メインバンクには、敢えて追加性・新規性を意図に盛り込むことを期待したい。新規性は会社存続のための差別化要因であり、デットの世界でもエクイティと変わらないのではないか。「新規性」「追加性」の定義を一旦広めに捉え考えていくことでよい。
  • インパクト投資はもうからないのでは?という懸念が強い。海外と比べてイノベーションの度合いは低い。VCだけでなく、大企業も新規性を求めていかないといけない。

 国際的な基準との整合性については、以下のような意見が出されました。

  • 国際的な基準から言って「収益性」は要件に含めるべきではないのではないか
  • 「収益性」という単語が多く見られ驚いた。インパクト投資はもうからない、というイメージ打破を狙っているのだろうが、金融庁が出すという点において、グローバルとの整合性を考えた方がよい。
  • 海外ではインパクト投資でリターンが出ないと考えている人は殆どいない。特に投資(Equity)だとイノベーションが深く組み込まれインパクト投資が隆盛している。日本ではデットでもEquityでもインパクトは儲からないという誤解があり、投資家に正しく理解してもらうことが重要。
  • 「要件(requirement)」という言葉は厳しいので、「要素(element)」「特性(attribute)」はどうか。日本の場合は「金融庁」が指針を出すと、あくまでも参考であると言っても、金融庁が指針を出して要件を定義したと捉える。そういうように考えると「要件」という言葉は強すぎるかもしれない
  • 金融庁の指針案であるため、これに合わないと偽りのインパクト投資とみられる、ということの懸念があるのかと思うが、厳格な金融監督行政上の指針ではない。やるやらないは金融機関の自由意志。
  • 要件と書いてあるが、すべては目指すところの共通認識を持つことが大きなメッセージ。キーワードの一つがポジティブフィードバックループ。社会全体のインフラとなりサステナビリティにつながる、その点に金融機関が関わっていくことが大事。ポジティブフィードバックループは素晴らしい言葉だが、必ずポジティブなループが全ての金融機関や事業者に見えているわけではない。やみくもにインパクトを求めてもできるわけではなく、事業者と金融機関が一緒に考えて見出さなければならない。
  • インパクト投資に関しては、まずは未発達の状況の中で、日本として何を作っていけるのか、という議論が重要。
  • 日本に根付かせるための指針が必要であり、日本のコンテクストから重要なことが、指針に盛り込まれている。それぞれの地域・国でどういうことばを使って要件なりを定めていくのか、それは異なっていい。ただ、目指すところは同じでなくてはいけない。
  • 多様なインパクト投資を求め、そこまで高い水準を求めているわけではないのであれば、そのことが伝わるような書き方になる必要がある 

融資の観点から、以下のような意見が出されました。

 ▶ 融資におけるインパクト評価のさらなる仕組みが必要。中期・短期の短いタイムラインでの評価を行い、トラックする仕組みが必要。

  • 間接金融、貸付業務の場合顧客のほとんどが成熟企業。新規性や追加性という点は新興企業やグロースが主体という印象。融資の面からも提言が生まれるといいと思った。
  • 融資期間とインパクト創出の時間のギャップを感じる。将来的に大きなインパクトを想定する融資の場合、融資期間にはインパクトが表出しないというケースもある。(スタートアップによってインパクトを出す)イノベーション事業への審査も、過去のCFの実態を見るという今の融資のやり方にそぐわない。
  • PIFがここまで広がっているのは日本しかない。リンクトローンよりも一段踏み込んだかたちでインパクトを分析し、エンゲージメントするなど銀行の力を発揮できる。
  • 間接金融として、インパクト商品を考えるのみではなく、エンゲージメントのコンサルや自治体と共同の取組みなど様々な業務にインパクトの視点を取組むというところも今後議論が必要。
  • 日本では圧倒的に融資が重要な役割を果たしており、銀行のエンゲージメント能力、特にメイン銀行の能力が高い。中堅中小への融資は長くても3-5年が多いなか、ポジティブフィードバックループと言っても、CFとして戻ってくることに時間がかかる。銀行として急激な変化を求めることはできないが、長く繰り返す融資を通じた継続的なエンゲージメントが行われることを想定し、総合的なエンゲージメントとして捉えていく。商品設計だけでなく、借入人との関係性、リレーションを変えていくものとして重要だと思う。
  • スタートアップの議論が多いが、圧倒的多数の中小零細企業の課題(生産性の向上)が解決されていない。代替わりの新しい経営者にアクセスしているのは地域金融機関。地域金融機関がインパクトについて業務のクオリティを挙げて支援して成長を助ける場面は沢山あると思っている。
  • 10年後20年後の社会に対するインパクトをエクジット後どう継続するかが大事。銀行が返済だけ求めるのではなく、誰がインパクトを保持していくのか、将来的な社会的絵姿が金融機関の間でも継続されていく必要がある。事業が成功した暁に出てくるインパクトはアーリーからあるし、実現可能性は高まる。次なる金融プレイヤーにつないでいく、金融間のエコシステムが出来ればよいなと思う。

 各アセットクラス別の意見としては、以下のような点が出されました。

 ▶ VCでは、スタートアップのステージによっては意図しているものと違うものになる場合もある。(要件の)4つのチェックをしても、あまりワークしない場合もあるため、投資家・起業家双方のコミットメントを契約書内で合意するのが良い。

  • 未上場企業向けインパクト投資の観点からは、指針としては、要件2の投資家の追加性、その投資家だからこそ出来ることは何か、という点に力点を置いていただきたい。
  • インパクトスタートアップでは、何を新規性、と当てはめられるのか不安があるので、具体例や事例の明示列挙があるとスタートアップ側としては有難い。一定の指針になって、インパクト投資を受けるに値する企業という一定のコンセンサスが得られるのは良い。これまでインパクトマネジメントに取組んできたが、インパクト投資家が求める指標と現場とが合わないことがあった。

 
 最後に水口座長が、「今日は活発なご議論を頂いたが、正式なご意見は改めてパブリックコメントに送っていただきたい」と述べました。また、国際的な整合性に関しては、「以前環境省のグリーンボンドガイドラインを作成した際は、当時日本でグリーンボンドを出している企業がまだほとんどない時期だったこともあり、グリーンボンド原則との国際的な整合性をかなり重視して議論した」、「インパクト投資に関しては、既に日本でも議論できる実務が育ってきているので、日本からも世界の議論に参加し、国際的なルールメイキングに関わっていくべき」、「ハードルを下げるとウォッシュになる可能性があるが、上げると理想ばかりで広がらないという議論があるため、バランスをとりながら議論していかなければならない」とのご発言がありました。

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