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調査研究

金融庁・GSG国内諮問委員会共催「インパクト投資に関する勉強会フェーズ2」第6回勉強会が開催されました。
開催レポート 金融庁共催勉強会

2020年6月より開催している「インパクト投資に関する勉強会」のフェーズ26回勉強会が20231213日(水)にオンラインにて開催されました。本勉強会は、インパクト投資に対する金融市場関係者と行政の理解を深め、国内外の社会課題解決に向けたインパクト投資への取り組みの意義と課題を明らかにし、我が国金融業界の持続的な発展に資する推進の在り方について議論することを目的としています。

6回勉強会は、フェーズ2の最終回として開催されました。これまでの勉強会の成果を共有すると共に、新たに設立された官民連携の「インパクトコンソーシアム」を取り上げ、インパクト投資の推進に向けた官民や民民の連携の在り方や、コンソーシアムに期待することについて、意見交換や議論を行いました。

冒頭に、座長の高崎経済大学学長水口剛氏、副座長の金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー池田賢志氏の両者から、ご挨拶をいただきました。水口座長は、3年半にわたって開催してきた本勉強会は今回で最後となることを挙げ、インパクト投資の今後について、インパクトコンソーシアムも含めて、参加者から忌憚のないご意見を頂きたいと述べました。池田氏は、本勉強会の構想ができた4年前からこれまで、インパクト投資をめぐる日本の状況は大きく変化してきたと述べ、今後はこれまで勉強会が果たしてきた成果についてコンソーシアムに上手くバトンを渡していくという意味で、本日は重要な会であると述べました。

次に、事務局より、フェーズ2総括ペーパー(別添1)の内容について説明を行いました。2020年に開始したフェーズ1では、インパクト投資の定義・目的やIMMの概要、参加機関の取組状況といった基礎のほか、アセットクラスの違い(未上場株式、上場企業株式・債券、融資)による差異・特性に焦点を当てた議論を実施してきたのに対し、フェーズ2では、インパクト投資のエコシステム全体を見据え、グローバルでのハイレベルな議論、インベストメントチェーンの上流に当たるアセットオーナーや受益者、また、投資先となる企業のインパクト志向の取組みにも焦点を当てたほか、エコシステム構築における環境整備やイノベーションの推進といった観点からも議論を実施してきたことを振り返りました。

議論に先立ち、金融庁サステナブルファイナンス推進室の西田勇樹室長より、インパクトコンソーシアムの概要についてご説明いただきました。コンソーシアム設立の背景として、環境・社会的効果(「インパクト」)の創出を経済・社会の成長・持続可能性に結び付ける「好循環」の実現が重要であり、産官学金等による幅広い連携が期待されていることを述べ、本コンソーシアムは、インパクト実現を図る経済・金融の多様な取組みを支援するものであり、投資家・金融機関、企業、自治体等の幅広い関係者がフラットに議論し、国内外のネットワークとの対話・発信を図る場であることを説明しました。また、当面の分科会構成としてデータ・指標分科会、市場調査・形成分科会、地域・実践分科会、官民連携促進分科会の設立が検討されていることを紹介し、それぞれの取り組み予定内容についてもご共有いただきました。各分科会は、インパクト投資に関する検討会での論点を取り上げており、各分野で既に民間のイニシアティブ等での議論が進んでいることを踏まえ、既存のネットワークと上手く連携・協業しながら進めていくことを説明しました。(参考資料:インパクトコンソーシアムのご案内ウェブサイト

続いて、各セクターを代表する15名の委員及び関係者から、コンソーシアムへの期待について意見を述べて頂きました。ご発言者(※敬称略)および発言内容の要旨は以下のとおりです。

<上場株式>

・りそなアセットマネジメント株式会社 松原稔氏(委員)
まず、インパクト志向金融宣言署名機関の立場からのコメントとして、コンソーシアムは主として「官民連携」で実現できることを中心に進めていただきたい。例えばインパクト関連データといったインフラの整備、インパクト評価や因果性に関するリテラシーの支援、民間のインパクトプラットフォームへの橋渡しの役割、そしてブレンディッドファイナンスの枠組み整備等が挙げられ、民民の取り組みへの過度な関与や民間資金への過度な依存は期待しない。機関投資家の立場として期待することとしては、①PRIで打ち出されているIFSIのような論点整理やインパクト投資の在り方に関する法的枠組みの整備、②特に受託者責任との関係性の整備、 ③インパクトファンドと既存のテーマ型運用など、運用区分の整備(インパクトとは何かの整理やインパクトレポートの必須化等)、インパクト投資は長期の運用であるため資産形成や積み立てに即したファンド投資の位置づけ整理、⑤企業のインパクト評価・インテンションの開示の推進、が挙げられる。

・アセットマネジメントOne株式会社 寺沢徹氏(委員)
運用会社は上場株式投資や社債を通じた運用が柱となるが、インパクト投資においては従来型の取引のフレームワークからの応用が必要。上場株式は企業そのものに対する投資であるが、企業活動全体を捉えられなくても、特定の活動や代表的な部門に焦点を当ててインパクトを評価するといった応用が必要となる。IMMも道半ばであるため、批判を受けながら改善・工夫を繰り返していくしかない。インパクト投資は、グリーントランスフォーメーションといった政策や企業のサステナビリティ開示にもつながる重要な話であり、この広がりが世の中を前に進める大きなドライバーになっていくことを期待する。誰がお金を出すかという問題に関しては、最も大きな課題が残るのが年金マネー。海外では長期運用の主体である年金がインパクト投資のドライバーとなっているが、日本ではほとんど動きが見られず、年金を取り巻く制度や法律を紐解いていくことが最も重要。社会課題の解決や経済効果への恩恵、受益者の恩恵に繋がることが「多事考慮」と整理されてしまう状況であり、もっと議論を進めて頂きたい。公的年金は300兆を超えているので、少しでも動けば大きなインパクトになる。コンソーシアムでは、熱い思いを持った方々が議論を進めていく場になるため、社会全体のインパクトに繋がっていくことを期待する。

<未上場株式>

・株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ 青木武士氏
未上場の企業は上場企業と比べて変化が大きく体制も盤石ではないということもあり、投資家はスタートアップと一緒になってインパクトを創っていく、まさにIMMを共に行うという運用スタイルである。そのような中、IMMの実践方法やインパクトレポートの出し方に関するプラクティスがまだ少ないということに課題を感じている。これまでインパクト投資についてはインパクト投資界隈の方々で議論をしてきており、専門的すぎる面もあったが、コンソーシアムでは色々な方が入ってくるという点が良いと思うので、底上げが出来ると期待している。コンソーシアムに期待することは、①コンソーシアムのTOCもしくはロジックモデルを作り、どう社会を変革させるかを示すこと、実践をどうしていけばよいのかというの課題感があり、現場で悩みながらやってきているので、ノウハウを共有できるような場が出来ること、の2点。貢献という意味では、積極的に自社の実践の共有をやっていきたい。幅広い方々が本質的に社会を良くするという方向性を共有しながら実践できる、学びの場になると良いと思う。

・リアルテックホールディングス株式会社 藤井昭剛ヴィルヘルム氏
社会課題の解決と経済成長というのは新しい資本主義の中心にも位置付けられているので、インパクトコンソーシアム全体の在り方としては、Network of Networksとして横断的に、日本全体としてどの分野で課題解決しながら経済成長していくかといった大枠の議論が出来ると良いと思う。VCの立場として期待するのは①データの整備、②政策提言、③海外とのネットワーク拡充の3点である。インパクトとパフォーマンスの関係性が見えないので算入しにくいというのが課題であり、プレイヤーを増やすにはデータ整備が重要だと考える。政策提言については、人材育成に関する政策や、インパクト評価に関する補助事業といった政策提言ができると良い。インパクトウォッシュを危惧しながら活動しなければならない一方で、多様性の排除は避けるべきであると考える。様々なプレイヤーが試行錯誤しながら進んでいくという段階であり、シード・アーリー期のスタートアップやVCについては、固めすぎるとインパクト投資から人を遠ざけてしまうので、一定の「幅」のつくり方についても、政策提言していけると良い。海外とのネットワーク拡充については、特に海外投資家を呼び込むような施策はスタートアップにとってメリットになるし、長期的に考えて日本でマーケットを広げていくことになると考える。

<融資>

・株式会社三菱UFJ銀行 畔上俊氏(委員)
これまでも国内でいくつかインパクト投資に関するプラットフォームが立ち上がり、機運が高まっているなか、金融庁が主体でコンソーシアムを立ち上げたことは、ポジティブなことであると受け止めている。これまで、インパクト志向金融宣言を主体に活動してきたが、今後コンソーシアムにおいても、金融機関の立場として貢献していきたいと考えている。インパクト投資というとベンチャー投資やエクイティが主体になると思うが、融資業務においては、サステナビリティ・リンク・ローンやポジティブインパクト・ファイナンスといった商品もインパクトファイナンスの重要なピースなので、融資の観点からも議論が深まっていくと良い。今後、融資の面で、インパクトファイナンスの活用や手法を議論していきたい。

・株式会社みずほフィナンシャルグループ 兼 株式会社みずほ銀行 末吉 光太郎氏(委員)
インパクトコンソーシアムへの期待として、これまでに挙がった、政策提言、キャパシティビルディング、投資のバリューチェーン全体での取組みといった点に合意する。これに加えて、以下3点コメントしたい。①海外のプレイヤーと話していると、Investor Contributionが鍵になってきていると感じる。コンソーシアムの中長期的な目的は、インパクトと成長の好循環であり、それに対して銀行は何が貢献出来るのかという観点では、中長期的にお客様のインパクト志向の経営を、融資を使いながら浸透させていくことだと思う。コンソーシアムには事業者も入ってくるため、インパクト志向の経営についても一緒に取り組んで行けると嬉しい。②Network of networksとしての期待がある。金融庁がバックにいるので、ネットワークを築きやすく中長期的目線で関係構築が出来ることに期待している。日本のインパクトマーケットがガラパゴスかしないためにも重要である。③日本の資金調達の4分の1が融資であり、中堅中小も成長資金のほとんどを借入に頼っている状況にあるなか、官民にしかできない、日本特有のインパクトの特定といった事にフォーカスできると良い。

・株式会社三井住友銀行 金子忠裕氏(委員)
この2年でインパクトに関するプラクティスがかなり進んできており、社内でも取り組みが広がり、グループ全体としても、中期計画で「社会的価値の創造」を打ち出し、マテリアリティも改定するなど、大きく足元が変わってきた。この背景には、機運の盛り上がりがある。先日香港のQAA(Quality Assurance Agency)のシンポジウムに参加したところ、インパクトに関するデータの整備、データの質の担保については、官民共同でAgencyを作ってデータ整備やアシュアランスを行っているとの事であり、取組が参考になりそうであった。商業銀行のバランスシートでは短期の運転資金貸がメインであり、中長期で見るインパクトとどうマージさせていくかという点が引き続き課題であり、ぜひ議論していきたい。

・三井住友信託銀行株式会社 金井司氏(委員)
コンソーシアムで重要なのは分科会での活動になってくると思う。ここでの議論が深まらないと全体の議論が深まらないため、誰が議論を形成し、リードしていくかという運営面が重要となる。インパクト志向金融宣言でも深堀りした議論を行っているが、コンソーシアムでは違うかたちで、特にエコシステムやステークホルダー連携といった、「連携」を意識した形での深堀りが出来ると良いと考える。逆にやってはいけない事として、例えばアセットクラス毎の議論を深めていってしまうと、横の連携が出来なくなってくる。インパクトエリアが特定されれば、非上場/上場でも、融資/投資でもインパクトの議論に変わりはないため、どのアセットクラスでも常に横移動していくことを念頭においた議論が必要だと考える。また、コンソーシアムは金融機関だけではなく複数のステークホルダーで形成されるため、インパクトパスウェイの整合性を意識した連携が必要であると考える。また、省庁間の連携にも期待したい。環境庁の「インパクトファイナンスの基本的考え方」や、内閣府の「地方創生SDGs金融調査・研究会」でもインパクト起点の議論をしており、経産省のトランジションファイナンスもインパクトファイナンスの一種であるため、これらの政策的なものを、コンソーシアムでうまく連携・整合できると良いと思う。

<地域金融>

・株式会社福岡銀行 神園龍一氏(委員)
地域の中小企業のサステナビリティ経営と企業価値の向上に貢献するために活動しているが、インパクトファイナンスという観点では、地域の社会課題にどう結び付けていくのかが論点。地方銀行協会よる会員行へのアンケートでは、半数以上がインパクトファイナンスに取組んでいると回答しており、入口の浸透は進んできているが、取り組み面での課題やコンソーシアムで検討していきたいことに関して以下3点コメントしたい。①インパクトファイナンスは投資だけでなく融資も含むものであるという共通の理解で進めていけると良い。地銀は大半が融資のお客様であり、融資も含むことで格段に活用の幅が広がる。課題として、インパクトという言葉が世間一般には浸透していない点が挙げられ、好事例や企業の活動ストーリー、対話の手法等を共有していけると良い。②指標の設定が大事だと考える。相対比較が出来る事や見える化が出来る事が重要になってくると考えられ、それが人材育成にも繋がってくると思う。③サステナビリティ部門はこの分野で議論を重ねているが、銀行界全体に広げていく仕掛けが必要であると考える。リスクとリターンにつながるものとして、インパクトをファイナンスの審査の観点に入れられるようになると良い。

・株式会社京葉銀行 本村直也氏
インパクト投資には取り組んでいるが、中小企業に対する浸透度が足りないという認識であり、今回立ち上がったコンソーシアムに期待している。小規模な地域金融機関では、事業のインパクト効果や収益性の測定・管理を全て自前で行っていくのは限界があり、コンソーシアムを通して知見を高めていきたい。コンソーシアムへの期待について現場目線から2点挙げると、まずは中小企業への浸透である。地域金融機関は多くの中小企業と取引を行っているが、環境・社会問題の優先順位はまだ低いという状況が現場からも挙がってきている。資源や原材料高に伴う足元のコスト上昇や人手不足が深刻であり、社会・環境課題の解決には時間とコストがかかるという認識が根強く、主体的な行動に移していくのは道半ばである。金融機関のアプローチにも問題があるが、企業側の意識を高めるためにも、インセンティブを高めるような環境づくりが必要である。また、2点目としてスタートアップ企業への対応が挙げられる。スタートアップ企業には、イノベーションを創出する可能性が期待されているが、小規模な地域金融は、インパクト効果や収益性の測定・管理能力がまだ低く、インパクト投資への対応は通常よりも更にハードルが高い。すでに知見を積み上げている政府系金融機関や省庁に関与して頂き、知見が共有されると良い。

<インパクトスタートアップ>

・ライフイズテック株式会社/インパクトスタートアップ協会 石川孔明氏(委員)
この3年で何が起こり、今後何が起こってほしいか、その中でコンソーシアムに何を期待するか、についてコメントしたい。3年前、“これからはインパクト・ネイティブなスタートアップが増えていく”と発信していたが、この3年間で協会も立ち上がり100社近い企業が参画し、経産省のJ-Startup Impactでも多くの企業から応募があり、Bコープ認証企業も増え、IPOケースでもインパクトを強く打ち出した企業が増えている状況。このように芽が出てきたところに、どれだけリソースを集中して世の中を加速していくような事例が作れるかが重要だと考える。冒頭金融庁の説明で挙がった4点は非常に重要な論点であり、それぞれに関してルール作りも必要だが、実際に取り組んでいる事業者や金融機関のリソースを投入し、「これだ」という事例を作って行くことが重要だと思う。それを世の中に打ち出すことで、後に続く人が増えていく。今後、更に担い手も増えていくと思うので、コンソーシアムを通して具体的な事例の創出、そしてインパクトを世の中の本流に近づけていく取り組みが出来ればと思う。

・ユニファ株式会社/インパクトスタートアップ協会 星直人氏(委員)
スタートアップ企業の立場から3点コメントしたい。①インパクト投資は、投資残高が4.9兆円ということで急成長し注目を集めているが、未上場株式への投資は9%程度であり、インパクトスタートアップに関する投資が盛り上がっているかというとまだキャピタル足りていない状況。コンソーシアムを通じて、インパクトスタートアップにキャピタルが流れるような勢いをつけていけると良い。②IMMについて、大企業のIMMとスタートアップのIMMでは差異があることをご理解頂き、多少切り分けて考えていけると良い。スタートアップは人も金も限られておりIMMのハードルが高いため、理想と現実を見極めたうえで現実的な対応を理解して頂けるとありがたい。③インパクトコンソーシアム全体として、議論は大事だが、何かしらの具体的なアクションにつながることが重要であると考える。

<業界団体>

・⼀般社団法人日本経済団体連合会 関正雄氏(委員)
経団連が標榜しているサステナブルな資本主義の実現、Society5.0の鍵となるのがインパクト評価・インパクト投資であり、日本経済を中長期的な成長軌道に乗せるためにも不可欠であると考えている。経団連としては、2020年のESG投資の進化とインパクト評価に関する手法の提言(経団連、GPIF、東京大学による共同研究)や、 2021年にSDGs本部の報告書で発表したSDGsへの取り組みの測定・評価に関する提言、また、2022年にソーシャルコミュニケーション本部の報告書として発表した、インパクト指標を活用した投資家との対話に関する提言等に取り組んできた。実際にアクションとしても広がってきており、確かな手ごたえを感じている。実践フェーズの中で、投資家やそれ以外のステークホルダーを含めた対話と協働の場を設けていくことは重要であり、コンソーシアムには意義があると考える。コンソーシアムへの期待として3点コメントしたい。①インパクト評価を社会に定着させていくためには、様々な動きが重層的に継続していくことが重要であり、対話を広げるプラットフォームとして機能してほしい。②マルチステークホルダーを巻き込んだ取組み・価値共創が重要であるため、裾野を広げ実践主体を増やすような活動となると良い。③官民での知見共有という意味では、行政事業の評価においても、もっとインパクト評価、アウトカムベースの取り組みが普及していくと良いと思う。パブリックセクターにも波及・共有していく流れが生まれてくると良い。

・日本証券業協会 森川怜子氏(委員)
金融庁で検討会が設置されてインパクト投資に関する統一した考え方・基本指針が議論されるなど、インパクト投資を普及していくうえでの環境がスピーディーに整備されててきていると感じる。証券会社は投資家と発行体の皆様をつなげる市場仲介機能が本業なので、多くの関係者がコンソーシアムに参加し、理解促進に資するような取り組みを我々なりに実施していきたいと考えている。コンソーシアムがスタートするにあたり感じていることとしては、参加者によって理解レベルや知見のある分野が大きく異なるため、知見のない人が脱落することない環境があると良いと思う。開催の都度、コンソーシアムの趣旨を振り返るなど、工夫をして頂くことが大事だと考える。

・インパクト志向金融宣言事務局 安間匡明氏(委員)
本勉強会は、4年前の12月に金融庁の池田氏を訪ねて構想を話したところから始まった。今後、この勉強会をコンソーシアムが引き継いでいくことになるが、勉強会の役割よりもはるかに大きな形で、金融庁が主体となって新たな官民連携の仕組みを作ったいうことが重要。インパクト投資を推進する活動の在り方として、①官民連携を通じたマクロ・エコシステムレベルでの推進、②民民連携を通じたマクロレベルでのインパクト投資産業構築の推進、③民民連携を通じたミクロレベルでの推進、④個別の金融機関独自の取組み、の4つのパターンがあると考える。4年前には、④の個別の取り組みだけではなかなかインパクト投資が推進されないという議論であったが、今では個別の金融機関の取り組み推進が進んできている状況である。③のミクロレベルの民民の取組みは、IMMの探求であると言える。民間金融機関が連携して、経験の共有やアイディアの出し合いで解決していくものであり、これまでガイダンスの作成等を行ってきた。②のマクロレベルでの民民の連携は、金融機関同士で連携して進めていく産業構築であり、アセットクラス毎/アセットクラス間の連携の仕組みやスタンダードや規律の策定・推進などが挙げられる。インパクト志向金融宣言での分科会間の横串を刺した活動もこちらに該当する。①の官民連携については、政府の規制では十分に対応できないような環境社会課題・外部不経済の問題を、民の力で解決しようというもの。これについて、官から発信を行い、民間で取組むべき分野を明確にして頂きたい。それによって、どの分野で民の力を発揮できるかがクリアになる。また、課題の深刻度を測る統計データの整備等も、進めて頂きたい。補助金の使い方等も官民連携で議論して頂けると良いし、年金基金といったプレイヤーが算入できるような受託者責任の解釈・整備も必要だろう。上記の4つの連携を使い分けながら、コンソーシアムの運営をして頂きたいと考える。

続いて、フロアからは以下のような意見が挙がりました。

  • ●インベストメントチェーンの切り口からのアプローチも重要。コンソーシアムが立ち上がった意義は多々あるが、インパクトの裾野が広がるということが重要であり、既に専門的な議論や知見の共有が進んでいる投資家や企業だけではなく、投資家や企業全体で、インパクトの創出や評価の方法について率直な対話を行ったり、インパクト視点での開示やルールを共有したりしていければ良いと考える。また、お金の流れは受益者、各企業、そして企業に投資する投資家に繋がっていくので、コンソーシアムでの議論内容を極力開示し、受益者である国民全体に対しても広く発信し、世の中の役に立つお金の使い方を広め、社会が動いていくことにつながるような効果も期待したい。
  • ●日本の投資家が海外に投資することが非常に期待されている。海外の投資家の呼び込みも論点だが、その次には開発途上国にどう資金を出ていくかという点も議論の対象にして頂ければと思う。
  • ●勉強会に参加している方々はインパクト投資十分理解しているが、それぞれの所属機関の中で社員全員にインパクト投資が十分理解されているかと言うとまだまだであると感じる。まずは各参加企業の中で、教育・人材育成が重要であると感じている。
  • ●海外連携に関して、勉強会的な機能はぜひコンソーシアムでも継続して頂きたい。海外との連携や海外の手法との違いを探るといった深堀した議論はインパクト志向金融宣言で引き取り、情報共有といった場合にはコンソーシアムを通して幅広く発信していくといったように、切り分けられると良いと思う。
  • ●IMMとインパクト評価に関して、金融機関・投資家に関することはSIMIやインパクト志向金融宣言で深堀をする仕掛けを作っていき、事業会社やインパクトスタートアップ等も含めたより幅広いステークホルダーに関係する話題については、コンソーシアムでは引き取って議論していくという切り分けも考えられる。
  • ●年金の運用に関する議論が出たが、社会的リターンとは何なのかが明確になっていないが故に、多事考慮の禁止という事になっている。社会的リターンが経済的リターンにつながることを示すことが何よりも重要であると思う。これがクリアされると、受託者責任や多事考慮の問題が解決していくと思うので、投資家の皆さんには、高いパフォーマンスの実績を出して頂きたい。データの整備も実施し、アカデミアも算入してくる仕組みになると良いと思う。
  • ●上場企業の財務分析では説明ができないような、インパクトと企業の成長の相関関係については、AIを使った分析も進んでいる。インパクト投資家でなくてもインパクトに関心を持つという好循環が生まれてくると思う。
  • ●企業がインパクトを創出してどう価値につながるのかについて、投資家もそうだが、企業側も分析をする必要がある。価値創造プロセスという形で示しても、どうやって統合思考に基づいて経営基盤の強化につながるかの分析ができていない企業がほとんどである。開示をする側にも課題があるため、これらを可視化できるような議論が出来れば良いと思う。
  • ●インパクトIPOワーキンググループでの議論では、インパクトの創出と企業の収益創出がポジティブに関連してフィードバックしていくのが理想形であるが、そうでない場合もあり、時間軸を長くとることによって相互のシナジーが説明できるのではないかとの議論を行った。潜在価値が高いほどバリュエーションが高くなるということが、日本企業ではまだ示せていないということがデータとしても出ており、この辺りを紐解いていくのが、投資家サイドのみならず企業経営の根幹になっていくと思う。時間軸を長くとり、生成AIも使いながらデータを精緻化し、企業経営の根幹に取り入れ、投資家とのエンゲージメントを進めながら 潜在価値を高め、新しい価値をきちんと開示していくことが、日本の産業が育っていくことにつながるという整理を行った。
  • ●インパクトコンソーシアムについて、一般の人には良く分からないと思うので、 総会で何を発信していくのかも重要だと思う。企業や投資家がどういった議論を行っているのか、インパクトはどれくらい出ているのか、そういった事を発信していくのが、このコンソーシアムを続けていくためには必要だと思う。財務リターンとインパクトリターンに関して、時間軸の話が挙がったが、どれくらいの期間でリターンが出たのかという報告は非常に難しいと感じている。

 金融庁の池田副座長は、多くの人から意見が挙がった年金基金の問題について、過去の財政投融資における年金積立金の歴史も振り返ったうえで、民間と公的なセクターの様々な協力の在り方についても模索が続いていると述べました。今後インパクト投融資を推進する場合のルートとして、アカウンタビリティを確保してIMMをしっかり行う、そしてリターンにつなげていく、というルートを追及していくということに収斂していくだろうと指摘し、それもコンソーシアムの重要な役割となるだろうと述べました。水口座長は、池田氏の指摘も含め、議論すべきこと・やるべきことは山積しており、これらの議論をコンソーシアムで引き継いでいきたいとコメントしました。

当日は、金融・市場関係者、事業者、業界関係者等からなる委員31名が出席し、関係省庁・オブザーバーも含めると約130名の参加がありました。

 

資料1:「インパクト投資に関する勉強会 フェーズ2」総括ペーパー

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