SOCIAL

最新情報

講演サマリー

インパクト投資フォーラム 2021開催レポート
開催レポート インパクト投資フォーラム セミナー・イベント

環境・社会・ガバナンスに配慮したESG投資運用残高は世界全体の運用資産の3分の1を占めるまでに成長し*、それに伴い情報開示や評価の標準化の動きも加速しています。このような背景の元、10年前に生まれた経済的なリターンと社会的リターンの両方を求めるインパクト投資も目覚ましい成長を見せており、2020年世界全体での市場規模は4,040億ドルと推計**されています。一方、日本の金融庁とGSG国内諮問委員会は「インパクト投資に関する勉強会」を2020年6月より開始し、多様なステークホルダーとの対話から、日本におけるインパクト投資の社会実装に向けた期待と課題が明らかになってきました。 

そのような環境下、2021年9月28日(火)に一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)とGSG国内諮問委員会は共同で「インパクト投資フォーラム2021」を開催いたしました。初のオンライン開催となった当日は、各セッションにおいて金融機関、官公庁、自治体、企業、NPO団体などから約200人の参加を得て、約40人の登壇者がインパクト投資を通じた社会課題解決、これらの動きを推進するコミットメントや、市場の今後の展望について活発な議論を行いました。

 *Global Sustainable Investment Allianceの試算による
**インパクト投資に関する世界的なネットワークであるGIINのレポートの推計

開会の挨拶
・鵜尾 雅隆氏(GSG国内諮問委員会 副委員長) 
・ロナルド・コーエン卿(The Global Steering Group for Impact Investment (GSG) 会長)
開会の挨拶

イベントはGSG国内諮問委員会の鵜尾副委員長の開会挨拶で始まりました。コロナ禍で表面化した社会課題の多くは以前から存在していたもので「資本主義の限界」と語られることも増えている、政治や行政の取組で課題解決できた時代もあったが、今後は、資本主義の進化が求められている。ESG投資と比べてインパクト投資はまだまだ小さい灯だが、これがこの不確実な社会における灯台のひとつになる、と、当フォーラムの意義を語りました。
そして、インパクト投資の生みの親として知られるロナルド・コーエン卿からのビデオ・メッセージでは、2021年8月に発表されたG7インパクトタスクフォースが紹介され、そして、インパクト投資においては一連のツールがなければ「グリーンウォッシング」になってしまい、インパクトの概念が幻想だと言われかねないと述べた上で、日本のインパクト投資の進捗への期待を寄せました。

基調講演
・天谷 知子氏(金融庁 金融国際審議官)
・高倉 透氏(三井住友トラスト・ホールディングス株式会社 取締役代表執行役社長)

天谷氏は、持続可能な社会の実現のためには金融資本市場を発展させることが大きな役割を担っていると述べた上で、アセットクラスごとに議論することが重要であると指摘。評価基準、手法を確立して、経済と社会へのインパクトとリターンを両立することが必要であるとの認識を示しました。
高倉氏は国連の責任投資原則の浸透が金融業界にえる影響について触れ、ポジティブ・インパクト・ファイナンス等、三井住友信託銀行の業界を牽引する取り組みについて紹介しました。

 その後、三つのメイン会場セッション、そして午前/午後に合計7つのブレイクアウトセッションが開催され、合計で41名の登壇者が、それぞれの立場からインパクト投資を議論しました。

〈インパクト志向のパーパスドリブン経営を目指す金融機関の挑戦〉
パネル: インパクト志向のパーパス経営へ、金融機関の挑戦
・石井 博子氏(第一生命保険株式会社 責任投資推進部長)
・金井 司氏(三井住友信託銀行株式会社 フェロー役員チーフ・サステナビリティ・オフィサー)
・松原 稔氏(りそなアセットマネジメント株式会社 執行役員責任投資部長)
・小笠原 由佳氏(一般財団法人社会変革推進財団 インパクト・オフィサー)

目的・存在意義・パーパスとして「インパクト創出」を掲げる三つの金融機関からピーカーを迎えたセッション。「インパクトの創造は我々のコアビジネス」であるとした三井住友信託銀行、「将来世代に対しても豊かさ、幸せを提供」をパーパスとするりそなアセットマネジメント、そして「社会課題解決」を運用方針に入れている第一生命保険。社会や将来世代を重要なステークホルダーと考える長期目線の投資家・金融機関ならではの考え方が紹介され、具体的な投融資の進め方や課題が議論されました。

〈理論から社会実装へ。情報開示や評価の進化〉
パネル: インパクトの情報開示
・Clara Barbey氏(Impact Mangement Project(IMP) 創設者/最高経営責任者)(録画)
・関崎 陽子氏(株式会社丸井グループ サステナビリティ部兼ESG推進部 部長)
・今田 克司氏(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI) 代表理事)

Clara Barbey氏は、市場の意識するサステナビリティは気候変動問題にとどまらないとした上で、欧米を中心としたインパクト情報開示のルール形成について、そして「サステナブルファイナンスの財務会計基準におけるメインストリーム化」とも言える進捗状況について紹介しました。
独自の共創経営レポートを公表する丸井グループの関崎氏は、レポーティングや情報開示そのものは目的ではなく、インパクトを生む企業で有り続けるための手段のひとつであるとし、企業価値の向上に関する不断の試行錯誤であることを語りました。そして、本セッションのまとめとして、サステナビリティに関わる企業や投資家の横の連携が今後も重要になってくると呼びかけました。

〈インパクト投資の大規模化や成長モデルの多様化〉
パネル:インパクト投資の大規模化が生むソーシャルユニコーン
・慎 泰俊氏(五常・アンド・カンパニー株式会社 代表執行役)
・片岡 正史氏(第一生命保険株式会社オルタナティブ投資部 イノベーション投資室長)
・林田 稔氏(三井住友トラスト・ホールディングス株式会社/三井住友信託銀行株式会社 経営企画部サステナビリティ推進部 主任調査役)
・藤井 昭剛 ヴィルヘルム氏(リアルテックホールディングス株式会社 取締役社長)
・篠田 真貴子氏(エール株式会社 取締役)

本セッションでは、ベンチャー企業家、機関投資家、VCなど様々な立場の登壇者の対話により、インパクト投資/インパクトマネジメントと事業の大規模化の関係、インパクト企業家からみる国内外インパクト投資家の違い等について議論されました。

冒頭、モデレーターの篠田氏の質問に答えながら、各スピーカーは「社会的事業がスケールするとはどういうことか」の考えを展開。海外のエクイティ投資家は、インパクトマネジメントを事業性評価のひとつとしてとらえており、企業価値を上げるため、スケールさせるための手段であるとの共有がされました。そして、ビジネスの成長に伴うミッションドリフトの課題や、その向き合い方をそれぞれの立場から紹介しました。

「事業を行う上で社会性を逃げ口上にしない」「インパクト評価は真新しいものではなく、社会貢献性を可視化する上でのコミュニケーションツールである」等、続く企業家・投資家の背中を押す対話のあと、インパクト評価を「当たり前」にしていくためにも、多くのプレイヤーが参入することを期待するとしてセッションを終了しました。

その他、インパクト投資に関する様々なトピックのプレイクアウトセッションが開催されました
B-1 インパクト企業が上場企業になること〜事例から見えて来る挑戦〜
B-2 ジェンダー平等に挑む投資:公開市場への広がりと可能性 presented by 笹川平和財団
B-3 インパクト測定・マネジメント(IMM):原則・フレームワーク・スタンダード開発の最新動向
B-4 金融機関による上場株式インパクト投資の実践
B-5 リスクマネーの多様化が始まる! ーIPOを前提としないインパクト投資の可能性
B-6 インパクト投資のリテールマーケティング: 最新消費者調査からのインサイト
B-7 金融イニシアティブを通じたジェンダーギャップへの挑戦 presented by みずほフィナンシャルグループ
閉会挨拶

フォーラムの締めくくりは、一般財団法人社会変革推進財団 大野理事長による閉会挨拶。インパクト投資家と投資先である企業とが協力して次の社会を作っていくことを呼びかけました。

以上

関連記事VIEW MORE

  • ホーム
  • 最新情報
  • インパクト投資フォーラム 2021開催レポート